Powered by Google 翻訳翻訳

【FAKY AKINAインタビュー】FAKYで出せない表現をソロでやっていきたい

FAKY AKINA

【FAKY AKINAインタビュー】FAKYで出せない表現をソロでやっていきたい

シェアする

  • X
  • Facebook
  • Line
  • X

エモーショナルかつチャーミングな歌声を武器に、FAKYで存在感を発揮するAKINAが満を持してソロデビューを果たした。11月27日に配信リリースされたファーストシングル「Touch」は、イギリス出身の人気女性シンガー、Shura(シャウラ)の代表曲のカバー。間髪入れず12月16日にリリースされたセカンドシングル「Gravity」は、AKINA自身が作詞作曲した意欲作。どちらもFAKYのイメージを超越する仕上がりで、彼女に潜在する魅力を大いに伝える楽曲になっている。FAKY加入から5年。彼女はどのような気持ちでソロデビューを迎えたのか。2曲の制作背景を深掘りしながら、AKINAが今、求めている音楽性と世界観を語ってもらった。

「Touch」のカバーは、FAKYファンの予想を裏切りたかった

──まずはソロデビューした今の気持ちから教えてください。
 
AKINA 日本に来た頃から自分の音楽をやっていけたらいいなと思っていたから、本当にうれしいです。ただ、グループの活動に慣れていたから不安もあります。新しい挑戦だから楽しみだけど、こういうインタビューもひとりは初めてだから緊張するし(笑)。
 
──違和感がある?
 
AKINA 全然違いますね。ライブとか音楽に関することは自信を持ってるんですけど、喋りとかは自信がないから(笑)。困ったときに隣にメンバーがいないと、どうしよう?って。そういうところもこれから頑張っていきます。
 
──ソロデビューの話は、具体的にいつ頃から進められていたんですか?
 
AKINA 2年前くらいです。自分で作ったデモをスタッフさんにずっと送っていて、いつか出しましょうと話してたんです。で、今年、コロナで外出自粛期間になったときに、このタイミングだなっていう流れになって。
 
──今年のステイホーム期間で曲作りに本腰が入った。
 
AKINA そうです。ずっと家にいるから本当にやることがなくて(笑)。その期間にたくさんデモを作りました。送ったデモの中には15歳のときに書いた歌詞もあって。日本に引っ越してきた当時の私の思いでもあるから、最近の私の気持ちではないものもあります。
 
──ファーストシングル「Touch」はシャウラのカバーです。この曲をカバーした理由を教えてください。
 
AKINA 最初に聴いたときにサウンドから好きになって、そこからいろいろ彼女のインタビューを読んだり、歌詞の意味を調べてみたら、曲の雰囲気と歌詞にすごくギャップがあって惹かれたんです。曲はチルで聞きやすいけど、歌詞はすごく深くて、他人の日記を盗み見てる感じ。読んじゃうと気まずいくらいの歌詞。こういう歌詞を自分でも書けたらかっこいいなっていう憧れから好きになったシンガーなんです。あと、メロディーがシンプルだから、いろんなアレンジができるんじゃないかっていうチャレンジ的な気持ちもあって、この曲を選びました。
 
──原曲は落ち着いたエレクトロニカ調の楽曲ですが、グッとテンポを上げて、ファンキーな味も加えて、アップリフティングな仕上がりになっています。アレンジはYaffleさんが手掛けていますが、彼とはサウンドの方向性について、どのような話をしたんですか?
 
AKINA 歌詞とサウンドに、よりギャップをつけたいと思って、もう少し明るいサウンドにしたいと話しました。あと、メロディーがシンプルだから遊びも入れられるなと思ってドロップも入れたいと話して。ただ、原曲のシンセの雰囲気はなくしたくなかったんです。そしたらYaffleさんがシンセの雰囲気を残しつつ、ファンキージャズみたいなサウンドを作ってくれて、二人のコラボ感がちゃんと出た気がします。

──レコーディングでは、どんなところにポイントを置いて歌いましたか?
 
AKINA 歌詞で好きになった曲だから、歌詞を大事にしたいなと思って。日本人が聞きやすい英語にもしたかったから、いつも以上に、発音とか、ひとつひとつの言葉が聞き取れるように気をつけて歌いました。あと、歌い方としてはあまり感情を入れすぎないように。原曲はフラットな感じがあるから、誰かに話してるような歌い方にしたんです。
 
──FAKYだと自分の声に誰かの声が重なりますが、自分の声だけで1曲作る経験はどうでしたか? 
 
AKINA 全然違いますね。家でデモを作ってるときにそれに気づいて「あ、ずっと自分の声だ」って(笑)。そのぶん何か工夫しないと飽きるというか、淡泊な感じになっちゃうなって思ったんです。だから、メインのボーカルはなるべく自分らしい歌い方にして、そこに重ねる声は、ピッチは同じだけど、ちょっと高く聞こえるような声色にしたり、低く聞こえるような歌い方をして、細かくニュアンスをつけていきました。そういうところも新しいチャレンジでしたね。
 
──そもそもファーストシングルをカバー曲にした理由は?
 

AKINA なるべくFAKYのファンのみなさんの予想を裏切りたかったんです。AKINAのソロプロジェクトだったら、ポップなダンスナンバーなんじゃないか?と思わせておいて、自分が好きなアーティストのカバー、しかもこんなファンキーな感じでいくよっていう。期待をいい意味で裏切るというか、サプライズをしたかったんですよね。
 
──しかも、シャウラですしね。FAKYのイメージだったらUSのR&Bシンガーやポップディーヴァを予想するかもしれないけど、UKのエレクトロニカ系のシンガーソングライターっていう。
 
AKINA そう。シャウラっていうところも自分らしいなと思っていて。個人的にはチルな雰囲気の、アンダーグラウンドなアーティストの方を聴くから、そういうアーティストへのオマージュも込めたかったんです。
 
──ソロデビューということで、改めて伺いますが、AKINAさんのルーツミュージックって、どんな音楽になるんですか?
 
AKINA 家族みんなと仲良くて、いろんなジャンルの音楽を聴いていました。みんな聴くものに個性があって、父はカントリーとかインディーフォークを聴いてたし、兄はゴリゴリのヒップホップが好きだったし、姉はエモ系とかゴス系を聴いてて。
 
──そんな中でAKINAさんが初めて憧れたアーティストは?
 
AKINA ジェネイ・アイコです。シャウラにも通じるんですけど、日記を読んでるみたいな生々しい歌詞がすごく好きで、自分もそういう歌詞を書きたいなっていう憧れから音楽を真剣に頑張りたいなと思ったんです。あとはエド・シーランとか、心の動きをセンシティブに書く人が好きなんです。

──サウンドも自宅で聞くものはチル系のものが多いんですか?
 
AKINA そうですね。外だと「Hi!」みたいなうるさいキャラだから(笑)、家にいるときはなるべく落ち着きたいなと思って。R&Bでも闇系の曲が好きだし、電気を消してチルな曲を聴いてますね。シャウラもそういう中にあったんです。

「Gravity」の歌詞は姉の恋バナから誕生!?

──セカンドシングルの「Gravity」は、AKINAさんの作詞作曲です。どのようなきっかけから書いたんですか?
 
AKINA 4歳上の姉とめっちゃ仲良くて、普段からいろんな話をするんですけど、ある日、すごく辛そうな状況にいて。彼氏とうまく行ってないって相談されたんです。でも、私もうまくアドバイスできないから、とりあえずそれを歌にしてみようと思って。姉の気持ちを歌詞に書いたんです。
 
──じゃあ、姉の恋バナがモデル。
 
AKINA そう。でも、姉にまだ何も言ってないから怖いんですけど(笑)。
 
──リリックのテーマは?
 
AKINA Gravityっていう言葉は日本語だと重力とか引力っていう意味で、それをテーマにしました。姉から話を聞いたときに、私の中でGravityっていう言葉を思いついて。本当は離れたいんだけど、どうしても引かれちゃうっていう。だから、歌詞も結末を言いたくなくて。これからどうしよう?っていう感じで終わらせたんです。

──歌詞を書くときにこだわった部分は?
 
AKINA Gravityに重ねて歌詞を書いていて。たとえば“You breaking all my bones down”っていう歌詞は体ごと“ハァ…”って落ちてる感じ。そういうところにポイントを置いてます
 
──意訳すると、“It’s weighting on my bones down”は、体が引きずるように重い、みたいな。“You breaking all my bones downは、もう崩れ落ちそう、みたいな感じですか。
 
AKINA そうです、そうです。しんどくて歩き出せない。力が本当に出ないみたいな。
 
──じゃあ、切なさというより苦しさを描きたかった?
 
AKINA そう。自分がまだどういう状況にいるのかわからない、どうすればいいかわからない苦しさ。
 
──藻掻いている状態というか。
 
AKINA いや、それもできない状態。今はしんどいだけっていう。もうHopelessみたいな。それくらい苦しい感じを書きたかったんです。
 
──「Gravity」もYaffleさんがプロデュースしていますが、どのようなサウンドを目指したんですか?


 
AKINA これは自分がMIDIキーボードで弾いたコードと歌声だけでデモを作ったんですけど、この曲も歌詞にフォーカスしたかったから、苦しい気持ちを感じられるようなサウンドにしたくて、シンセの音は重くしたいってお願いしました。あと、どこから音が鳴っているのかわからないようなスペイシーなサウンドが個人的に好きで。初めてのオリジナル曲だし、自分が憧れているサウンドを全部入れたいなと思ってYaffleさんにリクエストしました。
 
──「Touch」とは逆に、こちらはダウナー系のアンビエントサウンドに仕上がっていますね。浮遊感もあるし、ちょっとメランコリックな感じもある。
 
AKINA あと、この曲も声の重ね方をポイントにしていて。今までFAKYでは3声までしかやってないんですけど、これは4つ、5つくらい重ねていて。視界がぼやけていて自分の声も聞こえてこない、みたいな感じにしたかったから、たくさん声を重ねてアブストラクトな感じにしたんです。
 
──スモーキーな声から始まるのも印象的でした。掠れてるのとは違う、つぶやくような暗めのトーンから始まる。
 
AKINA そこもポイントを置いたところです。最初は力が出ない感じで歌いたくて。歌詞も“Can you hear me?  I‘m done whispering”って言ってるから、ウィスパーもできてないみたいな歌い方にしたかったんです。
 
──全体的にダークな雰囲気の中、2番のAメロの最後のシャウトがアクセントになっていますよね。闇を切り裂くようなシャープで強い歌声を一瞬発して、苦しさの果ての苛立ち、みたいな感情を表現している。
 
AKINA ありがとうございます。そこから2番のサビに入るからちょっと違う感じに持って行きたいなと思って、そういう歌い方をしたんです。もしかしたら何か状況が変わるかな?っていう感じを表現したかったんです。
 
──「Touch」もそうでしたが、この曲のサウンドや声のトーンも、AKINAさんのパブリックイメージにはないような気がします。
 
AKINA そうかも。でも、この曲は本当にAKINAっていう歌い方なんです。自分がいちばん歌いやすいというか、好きな歌い方が「Gravity」の歌い出しの、ちょっと崩れてて、あまりきれいじゃない歌い方で。オリジナル曲の一発目として自分らしい歌い方をしたかったし、この曲でもFAKYのイメージとは違うAKINAを知ってもらいたいなと思ったんです。

ソロ活動は自分をストレートに表現できる場所

──「Gravity」のMVもFAKYとは全然カラーが違う仕上がりですね。モノクロームの映像にしたのは何故ですか?
 
AKINA 監督さんのアイデアなんですけど、モノクロの方が曲の世界観を切り取れると思って。
 
──物寂しい感じが出ていますね。周りに人はいるけど、孤独を感じてるような感じというか。
 
AKINA そう。光が見えないくらい、ぐったりしてる感じというか。もう見ただけで暗いイメージになるんです。でも、それが曲の世界観にマッチしてるから。
 
──所々に出てくるリンゴは何を表しているんですか?
 
AKINA ニュートンが落ちるリンゴを見て引力を発見したところから、Gravityのメタファーとしてリンゴを使ったんです。今回のビデオでは普段の自分も自然にキャプチャーしたくて。海のシーンは、波に引っ張られる感じをGravityと重ねているんですけど、普段のAKINAと引きずられてしんどいAKINAの2つを表現してるんです。
 
──そもそも潮の満ち引きは月が地球に及ぼす引力で生まれているので、そこもGravityに掛かっているし。
 
AKINA 確かに! そこは気づいてませんでした(笑)。
 
──シャツ一枚で海に入っていますが、このビデオはいつ頃撮影したんですか?
 
AKINA 11月の頭です
 
──寒かったでしょ?
 
AKINA 寒かったです。寒かったー。
 
──2回言うくらい寒かった(笑)。
 

AKINA 監督には無理しないでって言われてたんですけど、私の中で海のイメージが強かったからどうしても入りたいと思って自分から入りました。でも本当、水が冷たくて。これからは冬の海に入りたくないです(笑)。
 
──今回のビデオは、FAKYのメンバーのMikakoさんがスタイリングしてるんですね。
 
AKINA 最初は本当にリアルの世界にしたいから、私服にしようという話もあったんですけど、どうしてもMikakoとやりたくて。MikakoがPocher(ポシェ)というファッションブランドのスタイリストもやっているから、コラボして一緒に頑張っていきたいという気持ちがあって、今回はMikakoにお願いしました。
 
──衣装で見て欲しい部分は?
 
AKINA Mikakoにこだわりがあって、リンゴを持つことがわかっていたから、ニットの袖口にディテールがあるものを用意してくれたりとか。
 
──なるほど。手元がアップになるから。
 
AKINA そう。私たちの考えが及ばないようなところまでMikakoが細かく考えてくれました。白シャツも海に入ったときに白いフェミニンなシルエットが欲しいという監督さんのリクエストからMikakoが選んできてくれました。
 
──MVでいちばん見て欲しいシーンは?
 
AKINA 最後の海で立っているところです。本当は海から出ている状態になれたらベストだったけど、まだ海にいる。頑張って立ち上がって海から出ようとしてるんだけど、やっぱりまだ出られていないっていう。そこが、さっき話したような結末を書いてない歌詞と重なるんです。
 
──最後に、今後のソロ活動に向ける思いを教えてください。
 
AKINA FAKYとソロは別物だと思っていて。FAKYで出せない表現をソロでやって、ソロでやれないことをFAKYでやれるようにバランスを取っていきたいです。サウンドも歌詞もスタイリングも、どっちにもプラスになるような世界観でやっていきたいなって思ってます。
 
──まだ2曲のみですが、AKINAさんのソロ曲には、ダークネスとか陰りみたいな要素があるように思います。FAKYにそのカラーはあまりないと思うから。
 
AKINA 確かに。わざとダークにしているわけじゃないんですけど、なるべくリアルな歌詞にしたいからそうなってるんだと思う。ソロ活動は私が思っていることをストレートに表現できる場所にしていきたいんですよね。私が持ってるいろんなカルチャーを遠慮しないで出して行きたいなって思ってます。

撮影 長谷 英史


「Gravity」
2020.12.18 ON SALE


▼ミュージックビデオ
https://youtu.be/tcSCB4iQ7ok
 


「Touch」
2020.11.27 ON SALE


▼オーディオトラック
https://youtu.be/XEquKAI9Haw
 

【AKINA OFFICIAL WEBSITE】
https://avex.jp/akina/
 
【FAKY YouTube】
https://www.youtube.com/channel/UCB0bl5q4gqVxwiygBwi-HKQ
 
【AKINA Instagram】
https://www.instagram.com/akina_faky/?hl=ja
 
【AKINA Twitter】
https://twitter.com/AKINA_faky
 

MORE INFOもっと知りたい

関連コラム

記事情報

猪又 孝

ライター

猪又 孝

1970年、新潟生まれ。音楽ライターとして国産のR&B/HIP-HOP/歌モノを中心に執筆。24時間HIPHOP専門ラジオ局「WREP」に放送作家/ディレクターとして参加中。共著に15人の著名ラッパーが歌詞の書き方を語る「ラップのことば」「同2」(SPACE SHOWER BOOKs)。