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【My Hero~奇跡の唄~】作曲・坂本龍一 作詞・つんく 小児がん治療支援チャリティソングの制作秘話!

LIVE EMPOWER CHILDREN 2021

【My Hero~奇跡の唄~】作曲・坂本龍一 作詞・つんく 小児がん治療支援チャリティソングの制作秘話!

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昨年に続き、国際小児がんデーの2月15日に開催される「LIVE EMPOWER CHILDREN 2021」。これは小児がんの子どもたちを音楽で元気づけるためのチャリティーイベントですが、今年は新型コロナウイルスの影響もあり配信イベントとして行われます。同時にこの日、イベントのテーマソングともなる小児がん治療支援チャリティソング「My Hero~奇跡の唄~」の配信リリースも決定。こちらは作曲・坂本龍一、作詞・つんくという共作による楽曲で、総勢21組の豪華アーティストが歌唱に参加。まさに日本版「We Are The World」とも呼べる作品になっています。この楽曲とイベントについて、合同会社「AVEX & HIROTSU BIO EMPOWER」代表にして一般社団法人「Empower Children」理事の保屋松靖人さんと、楽曲制作に携わった永岡昌憲さん(エイベックス・エンタテインメント株式会社 レーベル事業本部 クリエイターズグループ 原盤制作第1ユニット マネージャー兼チーフディレクター)にお話を伺いました。

画期的ながん検診「N-NOSE」はついに実用化!

──楽曲とイベントの話に入る前に、保屋松さんが同時に取り組まれている「N-NOSE」(線虫の習性を利用して1滴の尿から手軽に全身のがんリスクを高精度判定できるがん検診)の現状はどのようになっていますか?
(過去記事:尿1滴でがんを発見! 画期的ながん検査システム「N-NOSE」とは? https://avexnet.jp/column/1000237

保屋松 「N-NOSE」は去年の1月に公約通り実用化しまして、コロナの状況もあって若干後ろ倒しにはなってしまったんですが、今までは人が手作業で解析していたものがフルオートメーション、つまり機械で全て解析できるようになって、そのおかげで東京都日野市と愛媛県松山市の2ヵ所に解析センターが開設されました。これによって年間約25~30万人の方に検査を受けていただける態勢が、昨年ようやく整いました。

──いよいよですね。

保屋松 あと、昨年10月からBtoC向け(一般向け)のサービスも一部スタートしました。実用化以降、一部の医療機関や健保組合を通じてこの検査を受けられる態勢は整ったんですが、やはり皆さんコロナ禍で、感染のリスクから病院に行って検査を受けることははばかられると。なので「何とか自宅で安心して受けられるようにしてほしい」という要望が多く寄せられたんですね。BtoCのサービスというのは本来、実用化から3年後のスタートを想定していたんですけども、そこをだいぶ早めて、一部ですけれども始まりました。

──どうすれば検査が受けられるんですか?

保屋松 HIROTSU バイオサイエンスのホームページ(https://hbio.jp/)からN-NOSEの購入ページに飛んでいただいて、そこから検査キットが買えるようになっています。そうすると自宅にキットが届いて、採尿していただくと。そして採尿した検体については、これを持ち込む場所、「N-NOSEステーション」が東京・赤坂のホテルニューオータニの2階、それから福岡と大阪の全国3ヵ所に設置されました。ですのでネットでキットを購入して、検体を採取してそこに持ち込めば普通に検査が受けられるようになっていますので、これからより多くの方に受けていただけるような態勢が整いつつあるという状況になってきています。

──なるほど、かなり進んだんですね。

保屋松 ただ利便性を考えると、検体を直接持ち込んでいただくというのはやはりユーザーの方にご負担をかけてしまいますので、配送業者のほうと、ご自宅まで検体を取りに行く仕組みの構築を始めています。おそらく、一部の地域からのスタートになると思いますが、春先ぐらいにはこの仕組みも整ってくると思いますので、このコロナ禍の中でも自宅で受けていただけるようになってくると思います。一番問題視されているのは、コロナで亡くなる方よりがんで亡くなる方のほうが圧倒的に多いにもかかわらず、検診率がこの1年でだいぶ減ってしまっているということだと思います。

──そうなんですか?

保屋松 はい、「感染が怖くて病院に行けない」という方が多くて、そのためにがん検診率が下がっていて、結果としてがんの罹患率が上がってがんで亡くなる方が増えているという悪循環に陥っているんです。逆に言うと、この検査が自宅で受けられるようになってくれれば、当然そこでがんのリスクがある程度分かりますから、がんのリスクが高いとなれば、そこから先、少なくとも精密検査には行こうとなってくれると思うので、そういったところにつながってくれればいいかなと思っています。

──コロナの影響で、多くの病院でやむなく手術延期の措置が取られ始めているということも話題になっているだけに、早期発見に越したことはないですよね。

保屋松 そうですね。早期発見できれば治療費も安く済みますし、何よりステージ1で見つかった時とステージ3以上で見つかった時とでは、5年生存率が格段に違いますからね。だから今は早期発見・早期治療が大きなポイントになっていますので、そういう点ではN-NOSEがすごく貢献できるものになってくると思います。

──もう一つ、「LIVE EMPOWER CHILDREN」の活動についてはいかがでしょうか?

保屋松 これも昨年のN-NOSEの実用化に合わせて、同年2月15日の「世界小児がんデー」に東京国際フォーラムAでライブイベントを初開催させていただきました。ちょうど、コロナ禍のギリギリ前だったので、チケットを買っていただいて有観客で開催することが何とかできまして、当日は約3500名の方にご来場いただきました。収益については全額、一部の小児がん拠点病院ですとか、他の支援団体に寄付させていただいたんですが、その時に小児がん治療中のお子さんですとかそのご家族の方々から、「この状況下でものすごく勇気をもらいました」という声をすごくたくさんいただきまして、同時に「来年以降も継続してほしい」と。

──好評だったんですね。

保屋松 我々もどうにか継続していける仕組みを作りたいと思っていたところ、3月以降は緊急事態宣言も発令されて、ご承知の通りライブもできなくなってしまいました。その中でも、どういう形でエンターテインメントを届けていくことができるかというのを模索してきたんですが、「お客さんを入れてイベントをやるのは難しいだろう」ということは想像できていたので、無観客でライブの熱量を、全国の小児がん治療中の子供たちやご家族に届ける仕組みを作れないかということで準備を進めてきまして、このたび何とか、無観客のオンライン配信という形でようやく開催までこぎ着けられたというところです。

──それが今年も2月15日に開催される「LIVE EMPOWER CHILDREN 2021」ですね。

保屋松 小児がん治療中のお子さんが、このコロナ禍で外出許可も出なかったりとか、家族とも会えないという期間が続いているという話も聞いていますので、今回については全国の病院にいるお子さんがこのイベントを見ていただけるようにということで、お金を取らずに無料配信という形を取りまして、基本的にWi-Fi環境とスマホかタブレットがあれば見ていただけるという環境は用意できました。これが一つ成功すれば、このコロナ禍のスタンダードになって来年以降も継続していけるような仕組みになると思っているので、今年のイベントを何とか成功させるということにスタッフ一同、今一生懸命準備をしているところです。

「坂本龍一&つんく♂」の歴史的コラボが実現!

──そのイベントのテーマソングが、同日に配信リリースされる「My Hero~奇跡の唄~」。

保屋松 ちょうど昨年のイベントの一番最後に、「出演者全員で何か歌えたらいいね」ということで、「We Are The World」をみんなで歌わせていただいたんです。それ以前からも、私自身もそうですし出演したアーティストも含めて、「みんなで参加できるオリジナルのテーマソングみたいなものが作れたらいいね」という声があり、昨年は間に合わなかったんですけども、坂本龍一さんに「オリジナルの曲を書いていただけませんか」とオファー申し上げたところ、彼自身もがんサバイバーということもあってご快諾いただいて。ですので1年半ぐらいかけて準備をしてきました。

──その上、作詞はつんく♂さんということで。

保屋松 つんく♂さんからもイベントに関して「なにか別の形で、協力できることがあればぜひご協力したい」というお話をいただいていたんです。彼もまたがんサバイバーということもあって。それで坂本さんに「つんく♂さんに作詞をお願いしたいと思っているのですが」と、伺ってみたところ、ちょうど数年前に同じ病気ということでつんく♂さんから坂本さんにアポを取られたことがあったらしくて、そのような経緯もあり快諾して頂きました。「今回、曲は僕が書くので、作詞とアレンジ含めてトラックプロデュースは全面的につんく♂さんにお願いできたら」ということで、このプロジェクトがスタートしたのが1年半ぐらい前ということになります。

──それがようやく、実を結ぶことになったと。

保屋松 そうですね、昨年の7月頃にまずつんく♂さんが歌詞を書いてくださり、その歌詞にあわせて坂本さんが曲を書いてくださったのが10月頃になります。
その後は、坂本さんがニューヨーク、つんく♂さんがハワイということもあるので、メール等でやりとりをしながら曲に合わせて詞を変えてみたり、詞に合わせてメロディをいじってみたりとか、そういう往復が何回かあって、ようやく11月末ぐらいにベースとなるものが上がってきました。

──参加アーティストはどのように決まったのでしょう?

保屋松 もともと我々には「日本版We Are The World」を目指して作っていければいいなという思いがありましたので、昨年の「LIVE EMPOWER CHILDREN」のイベントに参加いただいたアーティストの方々と、今年のイベントに参加いただく方々を中心にまずお声がけさせていただきました。あと、イベントには出られないけども主旨にはご賛同いただいて「ぜひ協力したい」とおっしゃっていただけるアーティストもけっこういらっしゃいました。最終的には21組のアーティストにご参加いただけることになって、歌割りなんかもつんく♂さん側と相談しながら、それぞれの皆さんに歌っていただいたという感じですね。

──なるほど。

保屋松 一つのスタジオを取って全員が集まれればよかったんですけど、このコロナ禍ということと時間的な制約もあったものですから、なかなかそういうわけにもいかなかったので、今回はレコーディングにかかる予算をある程度皆さんにお渡しして、21組皆さんバラバラに、それぞれのレコーディング・スタジオで歌を録っていただいたものを最終的につんく♂さん側がミックスして、今まさに佳境なんですが(笑)、1月末には音源として納品いただくというスケジュールで進んでいます。

永岡 僕はこの流れの中で、各アーティストさんの歌をとりまとめて、ミックスができる形にしてつんく♂さん側にお渡しするということと、がんサバイバーのお子さん11人、それから鈴木亜美さん、木山裕策さん、Miracle Vell Magicさんの歌のディレクションさせていただくという部分で関わらせていただいています。

保屋松 各アーティストとのやりとりは2人でおこなって、音源の受け渡しについては永岡さんにお任せしています。

永岡 細かいところで音の差が出ないように、納品いただく音源のフォーマットなんかを指示させていただいて、あとはデータが来るのを待つという感じでした。今は納品が全て終わって、つんく♂さん側のミックス作業に入っていただいているところです。

がんサバイバーの子供たちもレコーディングに参加

保屋松 この「My Hero~奇跡の唄~」という楽曲はがんサバイバーのお子さんたちにも向けられている歌なんですね。これはつんく♂さんの思いでもあるわけなんですが。そこで私としては、がんサバイバーのお子さんたちの声をどうしても入れたいという思いがあったんです。JCCG(日本小児がん研究グループ)という団体を始めとする各支援団体様に協力をお願いして、がんを克服されたお子さんの中で主旨に賛同して参加していただける方を募ったら、11名集まっていただけたんです。そのお子さんたちは当然、レコーディングなんて全くやったことがないものですから、どうやってやったらいいかも分からないと。

──それはそうですよね(笑)。

保屋松 そこの部分は永岡さんが2日間にわたって、本当に小学校の先生のように歌の指導をしてくれて(笑)。

永岡 幼稚園の先生ですよ(笑)。「みんな集まって~!」みたいな。

保屋松 そうそう(笑)。そんな形ですごく場を盛り上げてくれて、いい形でお子さんたちの声も録ることができました。サビの部分にその声が入ってくるんですが、非常にいい作品に仕上げていただけたかなと思います。

永岡 なるべく広いブースを取って、2組に分けてそれぞれの間にはアクリル板を立てて……という感染防止対策を講じた上で、録らせていただきました。何ぶん、彼らはレコーディングをやったこともないし、どれだけ歌えるかも分からなかったんですよ。でも逆に、お子さんたちに完璧な上手さを求めるわけでもなく、その場で歌える声をいただいたほうが、この作品には合っているのかなと思いまして。だから「ここが高いよ」とか「このメロディーはこうだよ」といったような細かい指示はせずに、あらかじめ聴いてきていただいたものを「じゃあ歌ってみようか」という感じで歌っていただきました。

──まさに音楽の授業で合唱をする雰囲気だったわけですね。

保屋松 今回、下は5歳から、一番上は19歳まで、「未成年で、がんを克服したお子さん」ということで集まってもらいました。今、ちょうどこの曲のプロモーションビデオも制作しているんですが、全アーティストの歌っているところを撮影させていただいて、それをつなぎ合わせる作業をしていまして。その中で子供たちの映像も出てくるんですよ。今回参加してくれた中に遥政君という、すごくキャラの濃いお子さんがいてですね、永岡さんがレコーディングしていたら「あっという間に終わっちゃったな。俺、3時間歌うつもりで来たんだけど」って言って(笑)。

永岡 そうなんですよ! 最初、エンジニアさんが子供たちの声のレベルを取らないといけないので、「一度、練習で歌ってみようか」って、歌ってもらったんです。その後、「じゃあもう一回録ろうか」と言ったら「じゃあ何でさっきの録ったの?」と(笑)。

保屋松 百戦錬磨の永岡さんが一瞬たじろいでましたよね(笑)。

永岡 そんなこと聞かれたの、初めてですから(笑)。

保屋松 アーティストはみんな永岡さんには、そんなこと言わないですからね。

永岡 遥政君は、歌い始めるまではずーっとしゃべってるんですが、曲が始まるとビシッとスイッチが入って、一人だけノリノリでした(笑)。でもお子さんたちはみんな、僕が想像していたよりもすごく明るく元気で、彼らに向けた歌のはずなんだけど逆に大人が彼らから勇気をもらうなと思いましたね。親御さんたちも「もっと頑張ろう」という気持ちになるんだろうなと。

──それだけのパワーがあったということですね。

永岡 みんなレコーディング自体も初めてだし、まさかそんな機会があると思ってなかったですよね。今回、音楽というものにすごく有意義な形で接することができたと思うので、彼らのこれからの成長がすごく楽しみになりました。中でもその遥政君という子は……正直、生意気なんですよ。普通だったら怒るようなことも言うんですけど、彼だとなぜか許せてしまうというか。「このまま大きくなってほしいな」と思いました。帰る時も「じゃ、お疲れね!」って言ったら(顔の前で指を立てるアクションで)「じゃっ!」っていう感じで(笑)。

保屋松 大物感が漂ってましたね。

永岡 他にはすごく仲のいい女の子の2人組がいて、来た時からずっと手をつないでるんです。「仲いいね」って声をかけたら、同じ病室で知り合ったそうなんですよ。歌う時も離れず、ずっと隣同士でした。

──そのレコーディングだけでもいろんなエピソードがありますね。

保屋松 レコーディングにあたって、楽曲が坂本さんとつんく♂さんによるものということは事前にはお知らせしてなかったんですよ。だから当日、付き添いで来られたご両親が歌詞カードを見てその場で知って、すごく驚かれてましたね。

永岡 子供たちは知らないから、「それ誰?」って感じじゃないですか。遥政は「つんく♂って変な名前~」とか言いそうだし(笑)。でも、彼らが大人になって、それこそ音楽を始める子もいるかもしれない。その時に自分が坂本さんとつんく♂さんの曲を歌ったことが分かって、「これ、すごくね?」と思ってもらえたら、こんないいことはないですよね。だってそのお二人の曲を歌ったのはこの11人だけということになるわけですから。

保屋松 彼らが参加してくれたことで、楽曲に深みが出たのでよかったと思います。

全員の思いが一致したことでスムーズな進行に

──そもそもの話になりますが、坂本龍一さんとつんく♂さんって、なかなかあり得ない組み合わせですよね。お二人の間での方向性というのは、スムーズに決まった感じでしょうか。

保屋松 そうですね。お話を差し上げた当時、坂本さんご自身はこういう歌が主体の、いわゆる「歌もの」に曲を書き下ろすことはほとんどないそうですが、ご自身ががんを通じていろんな経験をされてきたからこそ、「同じ境遇にいる子供たちのために自分ができることがあれば」ということで共感されて、受けていただいたんだと思います。坂本さんもつんく♂さんもそこが共通していたので、こちらの思いも含めてすぐにご理解いただいて、それに沿った形で曲も詞も提供いただけました。今回、お二人にコメントもいただいていますが、そこにも彼らの思いが溢れていると思います。

坂本龍一氏、つんく♂氏、ロメロ・ブリット氏よりコメント
https://avexnet.jp/news/1006802

永岡 最初に聴かせていただいて、お二人ともやっぱりすごいなと思いました。「We Are The World」と同じで、とにかく音符の数が少ないんですよ。でもサビのところでガーッと来るものがあって、なかなかこういう楽曲には巡り会わないよなと思って、すごく感動しました。

保屋松 届いた時の第一声で、永岡さんからはそう聞きましたよね。「すごいよ」っていう。私も、小児がんの子供を抱える親の立場でもありましたので、最初につんく♂さんから頂いた歌詞を見たときには思わず目頭が熱くなりました。

永岡 それで、あの歌詞にあの音符を乗っけてくる坂本さんがまた素晴らしくて。

──では、曲についての調整というのはほとんど必要なかったという感じですか。

永岡 そうですね。また、その曲に沿って各アーティストの歌録りを行ったわけですが、皆さんコンセプトを理解してくださって、素晴らしい歌声をいただきました。Miracle Vell Magicさんなんて、歌った声を一度スタジオで聴いた時に、泣いてましたからね。歌う時に、子供たちの声も流したんですよ。それを聴いて思いが溢れたのか、泣いてましたね。

──制作中のMVも少し見せていただきましたが、参加アーティストが一堂に集っていた「We Are The World」とは対照的に、各アーティストがそれぞれレコーディングする様子がつなげられているのは今ならではという感じがしました。集まってというのも大変でしょうけど、それぞれと連絡を取ってとりまとめるのも大変な作業だったのでは?

永岡 やりとりの大変さよりも、上がってくる音源が、全部違うスタジオで、違う環境で録音されてくるわけじゃないですか。それをこれからミックスの作業で合わせていくのはかなり大変な作業だろうなあと。ただ、みんなの思い、楽曲の力のほうが強いので、何も問題なくクリアできると思いますね。そういう楽曲なんだと思います。そういうメロディーだし、そういう歌詞だし。グループものだと、同じスタジオで録っていてもいろいろあるんですよ。「ここは誰々と変えたほうがいいんじゃない?」とか。今回はたぶん、そういうのもないですよね。

──ちなみに歌割りは、どのように決められたんでしょうか。

保屋松 基本的にはつんく♂さん側と相談しながら決めました。皆さんキーのレンジがあるので、ある程度レンジをいただいた上で男性パート、女性パートということで歌割りをつんく♂さん側で考えられて、誰にどのパートを歌って頂くかというのは我々も含めて相談しながら決めさせていただきました。

永岡 キーの関係で「私はこっちのほうがいい」とか、いろいろあるかなと思ったんですけど、全然なかったですね。

保屋松 やっぱりそこは坂本さんとつんく♂さんというお二人が軸となっていて、アーティストの皆さんには今回の主旨と、そのお二人が中心となって進めるということをあらかじめご説明して、ご理解いただいてからのスタートでしたからね。私は全アーティストの録音現場に挨拶に伺わせていただいたんですが、皆さん「今回、参加させていただいてありがとうございます」とおっしゃっていました。「今年のイベントは出られなかったけど、来年はぜひ」と言ってくださった方もいましたし。

──それだけ皆さんのご理解が深かったと。

保屋松 全アーティストのビデオメッセージもいただいたんですが、やはり皆さんにとっても、坂本さんとつんく♂さんが書き下ろされた曲というのは大きいみたいで。「憧れの教授の曲を歌わせていただいたのはすごく光栄でした」とか、お二人に対するリスペクトは皆さんから感じられました。中にはスケジュールが全く空いてなかったのを無理やりこじ開けて参加してくださった方もいらっしゃいました。それぐらい、お二人の共作というところに、皆さん思いをもって参加されたんだなというのは痛感しました。

──お話を伺っていると、これだけの数のアーティストが参加して1年半をかけた作品にしては、全体にかなりスムーズだったのではないかと思えるんですが。

保屋松 結果としてはそうかもしれません。ただ、実際のレコーディングに入ったのはこの2ヵ月ほどで、実質1ヵ月でほぼ全部録った形ですからね。

永岡 しかも年末年始を挟んでましたし。その中でご調整いただいて。

保屋松 さらにコロナの状況も悪くなっていった時期だったので、「リリースまでこぎ着けられるのかな」という不安は正直あったんですけども、本当に各アーティストさんを含めた全ての方が協力的に動いてくださって。

永岡 逆にコロナの影響があったからこそ、年末年始でも皆さん国内にいてスケジュールが取りやすかったというのはあるかもしれないですね。

保屋松 それはあるかもしれませんね。コロナがなかったら、この期間はお休みで海外という方も多かったでしょうから。その期間にレコーディングをしてくれた方もたくさんいましたからね。

イベント当日は「事前番組」、ツイッターの「裏番組」と盛りだくさん!

──今回、ジャケットも有名なアーティストが描かれているということですね。

保屋松 ロメロ・ブリット氏という、ブラジル出身で世界的に有名なポップアーティストの巨匠と言われている方にお願いしています。実は、私も最初は存じ上げなかったんですが、海外では相当有名な方でいろんなアーティストとコラボされたりしていて、ご自身も難病で苦しむ世界の子供たちのためにチャリティー活動をされているんです。これから日本でも彼のことをプロモーションしていく動きがある中で、あるエージェントから「このプロジェクトはとても素晴らしいのでロメロがご協力できることはないですか」というオファーをいただいて、限定ではあるんですがCDをリリースする予定もあるので、そのジャケットをお願いしたら、快く受けてくださいました。

──ロメロさんの活動とも合致したわけですね。

保屋松 はい。この歌詞を英訳してお送りして、その内容に沿った絵を書き起こしていただきました。その意味では、すごく素敵なコラボレーションができたと思います。

永岡 色合いがすごくいいですよね。

──楽曲の参加アーティストと2月15日のイベントの参加アーティストはイコールではありませんが、楽曲参加アーティストに近いメンバーが歌うところを生で見られる機会というのはありそうでしょうか?

保屋松 お約束はできないですけども、今回の楽曲に参加してくださったのは、もともと昨年や今年のイベントに出演してくださった方々も多いですし、来年以降にはぜひと言ってくださっている方もいるので、いずれはそういう機会もあるかとは思います。また、今回のイベントの最後にはこの「My Hero~奇跡の唄~」を出演アーティスト全員で歌う予定なんですが、そこでこの曲のMVも初お披露目できたらと思っています。ライブの映像とMVの映像をうまくミックスして、本当にみんなで歌っているようにできたらと考えています。

──「My Hero~奇跡の唄~」は、「LIVE EMPOWER CHILDREN」というイベントのテーマ曲としてずっと歌われていくということですね?

保屋松 そうです。この先、イベント自体のテーマ曲として5年、10年と歌い続けていけるものになればと思って作ってもらいました。また今回、坂本さんもつんく♂さんもすごいなと思ったのは、お二人とも著作権も含めて全部放棄されているんです。

──そうなんですか!

保屋松 「全ての収益を子供たちの支援に充ててほしい」ということ、それから「権利を放棄するので、他のアーティストにもこの曲をカバーして歌ってもらって、広がっていってもらえれば」ということをご本人からもいただいていて、楽曲がダウンロードされたりCDが売れたりした収益は全額寄付させていただくということを明言して進めていこうと思っています。だからお二人が全て無償でやってくださったということも伝えながら、本当にこの曲が時代を越えて歌い継がれていくようなものになればいいなあと思っています。

永岡 英語バージョンとかもできたらいいですよね。

保屋松 将来的にはそういう展開も実現させたいですね。2月15日のイベントでも歌う予定ですが、この日に様々な配信ストアでもリリースされますので、一人でも多くの方に聞いて頂きたいと思っています。その収益も全て子供たちへの基金となりますので。

──同時に配信ライブでもこの曲が一番の見どころになると。

保屋松 はい。さらに、今回配信ならではの試みとして「開場時間」に当たる時間に、事前番組をご用意する予定です。このイベントを100倍楽しんでもらうための番組を今まさに作ってまして、古坂大魔王さんの司会でいろんなアーティストのコメントを紹介したり、小児がんへの取り組みを紹介したりという内容になります。また、ツイッターさんのご協力をいただけて、ツイッターのアカウントのほうで「裏番組」も配信する予定です。こちらは関根麻里さんとお笑い芸人の流れ星さんがMCで、バックヤードのアーティストに突撃してインタビューをしたり、ツイッターを通じて小児がんの子供たちにメッセージをもらったりというような、オンラインならではの新しい試みをしていこうと。ただイベントを配信するだけではなく、裏側も見てもらいながら楽しんでいただけたらと思っています。今回は全て無料配信となりますが、その代わりに視聴者の方々から寄付を募ってドネーションという形で全国の子供たちの治療支援に充てていくという仕組みになっています。

永岡 ツイッターのハッシュタグも決まってるんですか?

保屋松 「#LEC2021」です。ツイッターさんのご協力で、それを打つと絵文字も出るようになってます。

──事前番組もあり、配信中もツイッターで裏番組もあるとなると、視聴者も忙しく楽しめそうですね。

保屋松 そうですね(笑)。最近はツイッターで「次はこのアーティストが出るよ」とかやりとりをして、それがトレンドにもなっているようなので。ぜひご自宅で楽しんでいただいて、ドネーションもしていただければと思います。
子供たちへの支援にもなりますから。

LIVE EMPOWER CHILDREN 2021 ON LINE
2021.2.15(MON)
OPEN 16:00/START 17:00

出演者:うみくん, 梶原岳人, KEIKO, TRF, ピコ太郎, hitomi, Beverly,FlowBack, 松浦航大, まるりとりゅうが, MINMI, moumoon, ReoNa(50音順)
MC︓天野ひろゆき(キャイ~ン)/熊谷実帆(ニッポン放送アナウンサー)

LINE LIVE
https://empower-children.jp/lec/#onlineLinelive

mu-mo LIVE
https://empower-children.jp/lec/#onlineMumolive

YouTube
https://empower-children.jp/lec/#onlineYoutube

緊急事態宣言の延長に伴い、開場・開演時間を1時間前倒して開催となりました。
何卒ご理解賜りますよう、お願い申し上げます。

事前番組『LEC2021』(仮)
2021.2.15(MON)16:00~
本公演を配信する、YouTube及びLINE LIVEからご視聴いただけます
MC:古坂大魔王
ゲスト:未定

公式裏番組『LEC2021~裏側全部見せます~』(仮)
2021.2.15(MON)17:00~
Empower Childrenの公式twitter(https://twitter.com/Em_Children)よりご視聴いただけます
MC:関根麻里、流れ星
ゲスト:未定

チャリティーソング「My Hero~奇跡の唄~」
作曲:坂本龍一/作詞:つんく

■配信日︓ 2021年2月15日(月)
■価格︓200円(税別)※収益をチャリティーとして寄付
■備考︓iTunes Storeをはじめとする各⾳楽配信サービス(40ストア)にて配信。
販売価格の税抜き、税込みは配信ストアによって異なります。

■歌唱参加アーティスト:ISSA(DA PUMP)、大野雄大&花村想太(from Da-iCE)、尾崎裕哉、河村隆一、木山裕策、鬼龍院翔(fromゴールデンボンバー)、KEIKO、倖田來未、サンプラザ中野くん、鈴木亜美、新羅慎二(若旦那)、HIKAKIN & SEIKIN、ピコ太郎、hitomi、Beverly、FANTASTICS from EXILE TRIBE、松浦航大、Miracle Vell Magic、持田香織(Every Little Thing)、YU-KI(TRF)、YUKA(moumoon)、LECこども合唱団(50音順)

■CD発売予定日:2021年3月3日(水) ※3月2日(火)より販売開始
■収録内容:「My Hero~奇跡の唄~」
+Instrumental(全2曲)
■価格:シングル700円(税別)※収益をチャリティーとして寄付

【LIVE EMPOWER CHILDREN公式サイト】
https://empower-children.jp/lec/

【AVEX&HIROTSU BIO EMPOWER LLC.】
http://avex-hirotsubio.jp/

【一般社団法人Empower Children】
http://empower-children.jp/

記事情報

高崎計三

ライター

高崎計三

1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。