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“東京スカパラダイスオーケストラ”インタビュー。南米ツアーを越えて見えた、追い求める東京スカ。

東京スカパラダイスオーケストラ

“東京スカパラダイスオーケストラ”インタビュー。南米ツアーを越えて見えた、追い求める東京スカ。

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約1年ぶりのアルバム『GLORIOUS』が2018/3/14リリースとなる“東京スカパラダイスオーケストラ”。2017年のラテンアメリカツアーを経て、そのみなぎるパワーがギュッと凝縮された豪華10曲入りのスペシャルアルバムとなっています。今回はそのリリースにあたり、メンバーの“川上つよし”氏(Bass)と“沖祐市”氏(Keyboards)に、現在の意気込みを語ってもらいました。

日本とラテンアメリカの音楽の橋渡しがしたい

―約1年ぶりのアルバム発売ですが、『GLORIOUS』はどのようなものに仕上がりましたか?

川上) 最近は中南米に行くことが多いんですが、そこで感じたラテンアメリカのビートが埋め込まれたものが完成しました。メキシコとかでロックといわれるものは、独特の雰囲気があるんですよ。レゲエやスカにも独特の雰囲気があるんですけど、そういうものが面白いと思ったのでエッセンスとして注入された感じですね。

―「こういうコンセプトにしよう」ではなく、曲を作る中で色がまとまった感じなんですね。

川上) そうですね。それにプラスしてライヴでやることを念頭に置き、みんなでアレンジしていった感じです。

沖) リズムチェンジを意識的に組み込んで「ここは引っ張って、お客さんに盛り上がってもらおう」ってしてみたり。最近そういうことを考える機会がすごい増えてきました。

―“東京スカパラダイスオーケストラ”の方々が、日本に中南米の音楽を輸入しているっていう面も強そうですよね。

川上) 日本のロックを世界に紹介したいし、ラテンアメリカの音楽を日本に紹介したい。両方の音楽の橋渡しが出来たらいいですよね。

―コラボレーションされている方々も豪華ですよね。

川上) 日本のアーティストとラテンのアーティストを、それぞれ2人ずつフィーチャリングしたのは今回のアルバムで象徴的な点かなと思います。

―コラボレーションされる時、曲と人はどちらが先行なんでしょうか?

川上) それぞれですね。「白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)」は斎藤君ありきで作ったし。

沖) “TOSHI-LOW”君(BRAHMAN/OAU)のときは、タイミングがビシッとハマる出来事があって本当に偶然。スカパラのリハがある日に、“谷中”が“TOSHI-LOW”君との対談取材があったんですよ。そのとき“谷中(敦)”(Baritone sax)が上着を現場に忘れてきちゃったんですけど、“TOSHI-LOW”君がリハの現場まで届けてくれたんです。いつもフェスでは会うけど、リハの現場で会うのは初めてだったので嬉しくなって盛り上がっちゃって(笑)。ちょうどそのときに詰めていた曲が「“TOSHI-LOW”君バッチリじゃない?」って話になったんです。曲はすでに出来上がっていたんですけど“TOSHI-LOW”君用にシフトして、“谷中”が一日で歌詞を書き上げました。

沖) 彼が歌っている姿を想像したら、一発で「ああ決まりだ」と(笑)。

―今回コラボした“iLe”さんと“Emicida”さんに関しては、どのような感じだったのでしょうか。

川上) “iLe”はグラミー賞をとってる人なんですよね。2017年3月にテキサスで行われたSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)というFestivalで出会って。
“iLe”の音楽性はスカパラと正反対。聴いたことない感じだったので、すごく衝撃的でしたね。彼女もスカパラを気にいってくれたので、今回このような形でのコラボレーションとなりました。

沖) 「Te Quiero con Bugalú(テ・キエロ・コン・ブガルー)」は、すでに“iLe”がリリースしている曲なんですけど、それをスカパラ流にアレンジして録り直しをしたいと。データでやりとりをしていたんですけど、彼女は積極的に意見を出してくれて。「スカパラの歌うパートが欲しい」「日本語の詩をいれて自分が歌いたい」と。
普段コラボをする時は先に仮歌を歌ってもらうんですけど、今回は演奏を先に録って“iLe”に曲を送って歌ってもらう形をとったので、仕上がりを聴いたときに「よっしゃあ!」って。スカパラのアグレッシブなところと、“iLe”の艶やかなところがめっちゃ上手く融合した作品に仕上がりました。たくさんのやり取りを重ねたものでもあるので、感慨深いですね。

―今回のアルバムの中では、いい意味で異色を放っている印象があります。

沖) そうですね。曲調的には、今までのスカパラに、エキゾチックな面が出てきたと思います。

―日本国内だと同系統の音楽シーンでまとまりがちなので、こういうコラボレーションは珍しいですよね。

川上) SXSWのときに感じたんですけど、ラテンという音楽がより柔軟になってきてるんですよ。今までラテンっていうとサルサのイメージが強かったんですけど、ラテン・ミクスチャというか。今のラテンの人たちって音楽に限らず勢いがあるし、それを僕らも楽しんじゃおうかなって感じです。

―6曲目の「Believer feat. Emicida and Fióti FPM Remix」については、どのような感じだったのでしょうか?

川上) “Emicida”はブラジルで人気NO.1のラッパーなんですけど、実は何年も交流があって。過去アルバムのインストナンバーを何曲か送って、気に入ったものにラップをのせてほしいっていう話をしたんです。
リミックスをした“FPM”とも長いですね。もう20年くらい。DJとスカパラなのでジャンルは違うんですけど、20年間業界を潜り抜けてきたシンパシーを感じていて。“FPM”と“大沢(伸一)”君(MONDO GROSSO)にリミックスを頼めたのは、迫るものがありましたね。

―<ありがとう>っていう日本語歌詞が面白い曲ですよね。

川上) そうなんですよ! ああいうメロディーはもともとないので、僕たちもびっくりしました。「ありがとう」をラップに乗せるというのは、日本人じゃ逆に考えられないですよね。入れどころと抜きどころが、また絶妙じゃないですか。彼がフリースタイルのラッパーだから、できたことだなと。日本語の面白い響きを抽出するのがすごい上手くて。
“Emicida”は日本に来てもらったとき、一緒に居酒屋で打ち上げをやったりしてて。そのときに、すごい交流ができたんですね。”Emicida”に日本のアニメグッズをいろいろお土産に渡したりしました。

沖)少年ジャンプとか日本のマンガにすごい詳しくて。「少年ジャンプを入手した」ってInstagramにあげるくらい(笑)。

川上) この間、僕らが南米ツアーをしたときに”Emicida”がすごくいい店があるよって連れてってくれたんです。サンパウロの郊外に連れていってもらったんですけど、本当にオシャレでいい店で。”Emicida”が仲間を呼んでお店で自然とセッションが始まっちゃうんですよ。ずっとラップしあっているんですけど、日本のアニメのセリフを音で覚えてて自然と出てくるんですよね。
沖) 「邪魔だ!」とか。それを入れてくるタイミングがすごく絶妙で。「遊びは終わりだ!」とか(笑)。日本人の日常会話ではないよね、完全にアニメのフレーズ。

川上) 「Believer feat. Emicida and Fióti FPM Remix」にもその勘の良さが出ているな、と。

―曲がいいのはもちろんですが、アートワークも素敵ですよね。ジャケットの写真の躍動感がすごい。

川上) メンバー写真がジャケットっていうのがしばらくなかったので、たまには撮りましょうということで。“Leslie Kee”さんにお願いしたんですが、やっぱりすごかったですね。全員に角度の細かい指示とかを何から何まで。かかとの位置をセンチ浮かしてくださいって指示とか(笑)。いろいろなシチュエーションを撮ってもらって、ジャケットにどの写真を採用するか本当に迷ったんですよ。迷った写真たちは中ジャケットや裏ジャケットに入れたので、そちらも楽しんでもらえたら。いままでやってなかった構図もあったりするので。

―今回のアルバムはBlu-ray・DVD付のものがありますが、そちらの見どころはどのようなところですか?

沖) 2017年の海外ツアーでの様子とかラテンの盛り上がりのなかで、僕らがどういう風に体当たりで接しているのかを見てもらえるかと思います。

川上) 中南米の6か国くらい行ったけど、本当に事件続きだったよね。

沖) 最初の移動で、谷中のバリトンサックスは壊れたしね…。それをメキシコの楽器屋さんに修理してもらうってところから、まず始まった。本番前日の事だったから、まだ何か所もツアーが残っていて、これからって時なのに。できないんじゃないかってところから始まるんだよね。苦難を乗り越えてゆく…。まるで映画のような。

川上) わりと事件簿。最大の事件は、メキシコで起きた地震で一番デカいフェス「NON STOP SKA FESTIVAL」が中止になったことかな。ライヴが中止になってしまったので、急遽ベネフィットライヴ(チャリティライヴ)をやったんですよ。前日に告知したにも関わらず、入りきれないくらいファンが押しかけてくれたよね。

―2017年の国内ホールツアーの様子についても収録されているんですよね。

川上) ホールならではの演出や仕掛けを映像で楽しんでもらえます。“GAMO”さんや沖が意外な姿になったりとか、そういうところもばっちり収められてますし。美味しいところが凝縮された映像になってます。

まもなく2018年のツアーもスタート!


―今年もツアー(SKANKING JAPAN)を控えていますよね。“燃やせ、揺らせ”編も、“めんどくさいのが愛だろっ?”編も面白いタイトルツアーですが、こちらにはどのような意味があるんですか?

川上)  “燃やせ、揺らせ”編は「白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)」から、“めんどくさいのが愛だろっ?”編は“峯田(和伸)”君(銀杏BOYZ)をフィーチャーした「ちえのわ feat.峯田和伸」の歌詞からそれぞれつけました。

―ライヴの構想はできていますか?

沖) まだですけど、春の前半戦はスタンディングのライヴハウスなので。まさに、“揺らせ!!”

川上) ぜひぜひみんなには、はっちゃけに来てほしいですね。

沖) 今回のアルバムもライヴでやることを想定して作った作品なので。

川上) 聴いてもらえれば楽しみ倍増だと思います。

―『GLORIOUS』は盛り上がる曲尽くしですもんね。ライヴハウスとホール公演を両方行う意図は、どこにあるのでしょうか。

沖) 踊りたい人と落ち着いて聴きたい人がいらっしゃいますし、我々世代のファンはスタンディングがつらいって方もいるので、両方のニーズに合わせています。スカパラはホール公演も大好きで、照明や演出でどう見せようか考えるのも好きなんです。最近の曲はリズムチェンジを大胆にしているところもあるので、それをいかしつつ照明も一緒に作っていくつもりです。
ラストの大阪城ホールは大集合のスカパラフェスにしようと思ってて。いろんなゲストに声をかけている段階です。来てくれるかどうかはわかりません(笑)。

川上) 来てくれるでしょ。1年前くらいから声をかけているので。そこにめがけて突っ走っています。

―“東京スカパラダイスオーケストラ”にとって、大阪城ホールでやるということにどのような意味があるのでしょうか?

川上) ああいうところでスカをやるのは、世界的に見ても相当ありがたいことだと思いますね。

沖) 昨年メキシコ地震で中止になり、今年の2月に振替公演を行った大きなスカフェスティバル「NON STOP SKA FESTIVAL」で、ヘッドライナーを務めさせてもらったんですよ。1万人以上の人が集まって。だから、それを超えるくらい、もしくはそれに次ぐくらいのライヴにしたいですね。

―最後に2018年の展望についてお聞かせください。

沖) 今年は12月までビシッと、スケジュールを発表しているので、それに向かって走るだけ。夏はいろんなところのフェスに出られたらいいなと思っています。スケジュールはかなりタイトなんですが、合間を縫って海外公演も出来ればいいなと調整している最中です。

―海外で行きたい場所や地域はありますか?

川上) この前、初めてコロンビアに行ったんですけど、盛り上がりがびっくりするくらいすごかったので、また行きたいですね。

沖) プエルトリコも行かなきゃ。

川上) そう、プエルトリコ! そういった、ラテン的な新しいところから吸収した部分を押し出していきたい。東京スカって言い続けて30年近くたったんですけど、「これが東京スカだ」と言えるものが見えてきつつあるんじゃないかなって気がするんです。新しいムーブメントがきてるんじゃないかなって。あと数年の間で掴めるような手ごたえを感じ始めている。まずは2017年のラテンツアーを経てできた『GLORIOUS』で、楽しみを共有したいなと思っています!


『GLORIOUS』2018/3/14リリース
[CD+2DVD]
CTCR-14935/B~C ¥5,200 (本体価格)+税
[CD+Blu-ray]
CTCR-14936/B ¥5,600 (本体価格)+税
[CD] 
CTCR-14937 ¥3,000 (本体価格)+税

<収録内容>
-CD-
01. Glorious
02. 白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)
03. The Battle of Tokyo
04. Te Quiero con Bugalú (テ・キエロ・コン・ブガルー)  feat.iLe
05. 恋して cha cha cha
06. Believer feat. Emicida and Fióti FPM Remix
07. 野望なき野郎どもへ feat. TOSHI-LOW (BRAHMAN / OAU)
08. True Heart
09. 白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)MONDO GROSSO Remix
10. The Ring

-2DVD & Blu-ray-
・From 2017 Hall Tour“TOKYO SKA Has No Border” at 中野サンプラザ/東京エレクトロンホール宮城
・LATIN AMERICA TOUR 2017 “NO BORDERS” ライブドキュメンタリー(完全版)

【東京スカパラダイスオーケストラ OFFICIAL WEBSITE】
http://www.tokyoska.net/
 

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記事情報

坂井彩花

ライター

坂井彩花

元楽器屋の経験を持つライター。音楽系の記事を中心に執筆中。ntt人生は盛大なネタです。音楽とお酒と人がすき。Twitter :@ https://mobile.twitter.com/ayach___ 公式サイト: http://note.mu/color_music