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【伊藤千晃】たくさんの意味を持つ『sheer』に込めた想い【子供も参加】

伊藤千晃

【伊藤千晃】たくさんの意味を持つ『sheer』に込めた想い【子供も参加】

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本日、ミニアルバム『sheer』をリリースした伊藤千晃さん。タイトルの「sheer(シアー)」という言葉は形容詞としてだけでも「まったくの」「本当の」「ごく薄い」「透きとおるような」「切り立った」「険しい」など、様々な意味を持つ単語です。その言葉のイメージを様々なクリエイターに伝え、彼らのイメージを通過して出来上がった楽曲を収録したというこのミニアルバムについての伊藤さんの想い、それからご自身と周囲の環境もいろいろと変わる中、気づいたことなどについてうかがいました。

タイトル『sheer』に込めた想いとは……。

──ミニアルバムのタイトルになっている『sheer』という言葉ですが、すごくたくさんの意味を持つ単語なんですね。

伊藤 そうなんですよ。私もそこが面白いなと思っていて。ミニアルバムを制作するにあたって、どういう想いを込めてどういうタイトルにしようかなって、よく行くコーヒーショップで一人でコーヒーを飲みながらしばらくずっと考えてたんですね。で、私は自分の気持ちとか忘れちゃいけないものを、『自分ノート』という、持ち歩いてるノートに書き出してるんですよ、最近。それをずっと書いてる時に、自分が今感じていることとかを辿っていって「sheer」っていう言葉を見つけて、これが今の自分の気持ちだったり、今後表現していきたい音楽にピッタリ合うなと思って、そのタイトルにしました。

──その言葉が持ついろんな意味を含めて、と。

伊藤 そうですね。『sheer』に込めた想いというのは、最近の世の中って見えてるようで見えてない、薄ーい膜のようなものがかかった世界に見えてしょうがないんですね。それこそ「sheer」には「ごく薄い」という意味もあるんですけど。そんな中、コロナ禍になっておうち時間が増えて、私自身、携帯を見る時間がすごく増えたんですよ。SNSを見る時間が増えると、情報だったり誰かが上げている投稿に対して、自分の生活と比較しちゃって、一瞬にして不幸になったり、幸せになったりして、感情がすごくネガティブになってしまった時があって。ネガティブな気持ちになるのはしょうがない、でも、そのネガティブな気持ちから、どう気持ちを前向きに、ポジティブに変換していくことができるだろうかということをテーマに、『sheer』を作っていったという感じですね。

──なるほど。今回、特に伊藤さんが参加されている詞には「解放」というようなテーマが見えてきていたんですが、それはそういう理由なんですね。

伊藤 今回いろんなクリエイターにお願いして、面白いなと思ったのが、私はみんなに同じように「sheer」の説明をしたんですよ。で、そのクリエイターたちが感じる「sheer」を楽曲にして戻してほしいということで上がってきた楽曲たちなんですね。私の説明はみんな同じなのに、それで上がってきた楽曲はみんな違うというのが、私の中でのこだわりポイントなんです。その中でも作詞もさせてもらった「リトル・ミー」とかは、そのクリエイターと話している時に、「見えてるようで見えてない、そんな現実さえも重たい時代だよね」みたいなところから、「だったら、どういう風にポジティブに変換してる?」ってなった時に、「現実逃避してる」って言葉が出てきたんですよ。「現実逃避」っていうとネガティブなワードに聞こえがちだけど、私は「いい現実逃避は気持ちを救うな」と思ってるんです。

──分かります。

伊藤 例えば、流行ってる韓国ドラマなんかもそうだし、私は最近アニメとか漫画にハマってるんですけど、その世界にドップリ浸かり込むことによって、自分の気持ちがうまく切り替えられたりっていうことはあるじゃないですか。それで、「現実逃避」ってネガティブなことだけじゃないなという思いから「現実逃避曲」ということで、「リトル・ミー」を書いたんですね。だからサビのところでは、「傘を差さなきゃいけない雨の日にも、傘が空を飛ぶような想像をしてみなよ、それだけでワクワクした気持ちにならない?」みたいなことを訴えかけてるんですよね。

──現実にとらわれず、自由にいようと。

伊藤 はい、想像だけはみんな平等に与えられたものなんだから、それを使って自分自身楽しくなってしまおうよっていう、そんな想いが込められてます。

──曲調もポップかつ軽やかですよね。

伊藤 曲調は、どちらかというと今回は心地よく、気分よくなれるものが作りたかったので、テンポのある曲であったり、音に関しても、聴いてて元気が出るような音を選んで引っ張ってきました。

──先ほど、「sheer」という言葉について説明して、各クリエイターに楽曲を制作してもらったという話がありました。上がってきた曲については驚きもあったと思うんですが。

伊藤 ありました! 「sheer」という言葉を同じように伝えたのに、こんなにもとらえ方によって違う観点からみんな上げてくるんだなというのには驚かされたし、すごく感動しました。中でもI Donʼt Like Mondays.(以下、IDLMs)が作ってきてくれた「アンドロイド」なんかは「そう来たか!」と思って。「千晃さんの『sheer』の話を聞いた時に、自分と戦ってるように見えた』と。「ネガティブになってしまう自分とか、比べてしまう自分とか。ということは、自分の中にもう一人ロボットみたいな自分がいて、その人に負けないように、その人に気持ちを持っていかれないように千晃さんがしてるように見えました」っていうことで「アンドロイド」という曲を作ってきてくれたんですね。「見透かされてる!」と思って、けっこうハッとしました(笑)。

──それだけしっかりと「sheer」の説明を受け止めていたということですね。

伊藤 あと「きらり」という曲については、ちょっと「現実逃避」というのを引っ張っていて。これは「リトル・ミー」と同じく宮田“レフティ”リョウさんの作曲なんですけど、「現実逃避をもっと気持ち上の段階まで引っ張った世界観でやりたい」ということで、「リトル・ミー」が「現実逃避してみれば?」という段階だったのに対して、「きらり」は「現実逃避してます!」みたいな(笑)。そういう世界観のものを作りたいね、ということで、現実逃避って子供の方がうまくできてるんじゃないかと思ってて。いろんな想像力を働かせたりということについては、私にも子供が生まれて、子供の方がそういう素直な気持ちを持ってるなと常々思ってたんですね。

──特に小さい子の想像力というのは、驚かされるものがありますよね。

伊藤 はい、だからここでは息子から影響を受けて、子供心を表現するような曲を作りたいということで生まれた曲なんですね。それに今回、息子に声の参加もさせてもらって。世界観を重視するために、子供の声なんかも交えた曲になっています。

──あの声は息子さんのものだったんですね! 「Merry Go Round」という曲も、「流されてもいい 自分に少し優しくなろう」という歌詞がある通り、ある種の「解放」を歌ってますよね。

伊藤 ホントに、SNSとかもやりづらい時代じゃないですか。ちょっと言葉を間違えただけでものすごくバッシングされたりだとか。本当に見張られている世の中というか見られている世の中なので、何か間違ったことが起これば、それだけ責める人もいるし。「他人が責めてくれるんだから、自分だけは自分のことを優しくしてあげるような、そういう気持ちを持ってもいいんじゃない?」っていう想いも、この曲には込められています。

 ──1曲目に続いてこの曲もすごくポップできらびやかで。

伊藤 ライブも視野に入れて楽曲制作したかったので、ライブで盛り上がるイメージも織り込みながら作ったという感じですね。

──最初の2曲が明るくポップな曲調なので、今回のミニアルバム全体のイメージがそうなっている感もありますね。

伊藤 「明るいアルバムにしたい」というベースで作ったわけではないんですが、「ここにはこういう曲がほしい」というのをやっている中で、自然と明るい曲が集まったというのはありました。

「地に足が着いた」幸せを感じるようになった30代の“今”

──3曲目は「summer memories」ですね。こちらは昨年7月に配信されていたもので。

伊藤 これは夏の始まりをイメージした曲ですが、去年はコロナ禍で2ヵ月間ぐらい緊急事態宣言が出たじゃないですか。その間に、「それでもやっぱり音楽を届けたい」という気持ちから、初めてスタッフさんたちとリモートでの打ち合わせを何回も重ねて。でもみんなまだ慣れてないから、回線がつながらないとか声が聞こえないみたいなことをやりながらできたのがこの曲でした。レコーディングとか楽曲制作の終盤は、換気されてるスタジオとかで集まって作業したんですが、そういう感じで今までの当たり前がなくなりかけてた時期に、スタッフさんたちと協力して、音楽を届けようと作った、私の中でも想い入れの深い曲になります。

──夏の切なさみたいなものが歌われていますね。

伊藤 おうち時間が2ヵ月ぐらいあって、私自身、ファンの皆さんに支えられてたんだなということを改めて感じた期間だったんですね。私もファンの人たちの顔を見て、「千晃ちゃん、頑張って!」って言われるから、「あ、みんなにまたいいものを届けたいな」って思ってたんだなと。ありがたいことにSNSではつながってましたけど、そのみんなの顔が見られなくなって、笑顔も見られないし……ってなると、活力みたいなものが湧いてこなくて。イベントとかも中止になったりして、正直「寂しいな」とか「つらいな」とか思ってた時期もあって。でも、近所への買い物とか散歩には出かけられたじゃないですか。そういう用で出かけた時に空を見上げたら、すごくキレイな空だったなあと。この空の下で、ファンのみんなとも、大切な人ともつながっているんだなっていう想い、何かそういう気持ちを歌にしたいなと思って、サビには「同じ空の下で見てる」という言葉を入れさせていただきました。

──4曲目は、先ほども話に出た「アンドロイド」ですね。この曲の作詞作曲と演奏もしているIDLMsとは、昨年10月に配信された5曲目の「真夜中の処方箋」からの縁なんですよね。

伊藤 そうなんですよ。「真夜中の処方箋」はIDLMsのボーカルのYU君に作詞をしていただいて、「いつか楽曲も作ってもらいたいな」と思っていたところ、今回アルバムの話があったので「1曲、お願いできませんか」という形で依頼させていただきました。

──そもそもYUさんの詞だったりIDLMsの演奏だったりを、どう感じられてたんですか?

伊藤 年が近いんですよ、メンバーのみんなと。入りとして「年が近くてうれしいな」というのがありましたし、彼らの曲を聴いていくと、何だろう……色っぽさだったり、音のシンプルさ、カッコよさだったりがすごく今の私に響いていて、ただただ彼らのアーティスト性に惹かれたから、またお願いしたいと思ったんですね。ただきっかけとしては、IDLMsのメンバーと一緒に、時計のHENRY LONDONというブランドのアンバサダーをやらせてもらったんです。それがきっかけで深く知ることになって、同じアーティストとして同世代として、いろいろ盛り上げていけたらいいなあということで、今、協力してもらってます。

──「アンドロイド」は演奏も全部IDLMsですよね。彼らは自己認識も「ロックバンド」ということですが、いわゆる“バンドサウンド”ではないところが面白いですよね。

伊藤 ジャンル的には何て言ったらいいんですかね?(笑) 私的には、このサウンドが色っぽく映っていて、好きなんですよ。今回は特にジャンルを問わず、私が「素敵だな」と思う方たちにお願いすることができたので、そのへんはすごくよかったなと思います。

──その一環がこのサウンドということですね。で、続く「真夜中の処方箋」が、最初にYUさんに作詞を依頼した曲だったと。


伊藤 この曲が、先ほどの話で出た時計ブランドであるHENRY LONDONのタイアップ曲だったんです。一緒にアンバサダーをやるYU君に、せっかくだからちょっと関わってもらったらストーリーもあるから楽しくなるんじゃないかと思って、作詞をしてもらいました。この時も、その時点で私が思っていること、「最近、こういうことが気になるの」とか「こういう気持ちになることがあるの」っていうことを伝えたら、「あー、了解です。千晃さんをイメージして書けそうな気がする」って言ってくれて上がってきたのがこの歌詞だったんですね。「あ、私ってYU君に、そんなに暗く映ってました?」みたいな(笑)。夜中になるとネガティブな自分が出てきて、ちょっとイヤなヤツになるみたいなね(笑)。「いやあ、千晃さんは絶対、ニコニコしてるようでいて、何か黒いもの持ってますよ」って言われて(笑)。それを、うまく歌詞に落とし込んでくれたのがこの曲です。

──そして6曲目が、先ほども出た「きらり」。本当にファンタジックな世界ですよね。

伊藤 先ほどもお話しした息子の影響だったり、とある絵本も題材に取り入れて作らせていただいたんですけど、この曲も、作る時にレフティと一緒にいて、「こういう音を入れたい」とか、「もうちょっと夜の世界観を出したいので、キラッとした音、何かないかな?」というので、一緒にビンテージ木琴とかトイピアノとかをいろいろ探して、音も一緒に楽しませてもらった一作なんです。で、私とレフティのこだわりとして、「生き物の声が入った曲を何か作りたいね」っていう話をしていたことから、最後の最後に鳥の鳴き声を入れたりして。そういうところもファンタジー要素が詰まっていて、いいんじゃない?とか。

──先ほどの息子さんの声もそうでしたが、あの鳴き声もそういう経緯だったんですね。

伊藤 2番からはいろんな太鼓とかの音がいっぱい入ってくるんですけど、それは森の仲間たちが集まってくるイメージで作ったりとか、そういう想像を膨らませながら制作していった1曲です。制作過程も楽しかったです(笑)。

──ちなみに息子さんって何歳になるんでしたっけ?

伊藤 4歳です。周りからは「あっという間に大きくなっちゃうよ」って言われるんですけど、今はまだまだ手がかかるし、毎日ヒーヒー言ってますし、それこそおうち時間で一緒にいる時間が長くなって、「私ってイヤなママだな」って思ったりしたこともあって。そういう風に思ってるママたちもたくさんいると思うから、そういう方たちのちょっとした癒やしの時間になってくれたらいいなって思いますね。

──そういう部分で、世界が広がりましたよね?

伊藤 メチャクチャ広がりました! 私の場合は180度違います。「子供心」なんて20代の時に置いてきた感じだったので(笑)。本当に仕事にまっすぐで、怒濤の日々をありがたく過ごさせてもらってたので、「今に一所懸命」というのが20代だったんですけど、30代は自分を見つめ直す時間、息子との時間もそうですし、自分の生活もそうですし、いろいろ見直して、改めて幸せを積み重ねていく時間が、今、一番幸せを感じる時ですね。

──20代に感じていた「幸せ」とはまた質が違うものですよね。

伊藤 全然違いますね。20代は本当にいろんな仕事をさせてもらって、好奇心というものが勝っていたので、それはそれで私にとってはすごくいい時期だったんですけど、30代はもうちょっと地に足が着いた感じがしますね。仕事とプライベート、ONとOFFは分けた方が自分のバランスが取りやすいというのもあって。

──それによって、また今までと違うファン層もできているのでは?

伊藤 そうなんです。それを感じ始めたのが本当に最近のことで、もともとファンでいてくれた方たちも年齢が上がってきたりだとか、昔とは求められるものが変わってきている気もするので、自分が今やりたいことを表現しやすくはなっているのかなと思います。

──その時期その時期によって、いい活動ができている感じがしますね。

伊藤 本当にありがたいことに、音楽も作らせてもらったりとか、ブランドディレクターもやらせてもらったりと、誰かが一緒にやってくれるから成り立ってる仕事で生きてるなって思うと、改めて感謝の気持ちしかないですね。私ってホントに一人じゃ何にもできない人なので(笑)。感謝しなきゃいけないのは当たり前なんですけど、忘れちゃうこともあるし、イライラして余裕がなくなるとネガティブな気持ちになったりもするじゃないですか。このアルバムの曲にも書いてるんですけど、幸せって自分の身の周りにもいっぱい落ちてるから、そこに目を向けて自分の幸せ感度を高めていけたらいいなって思ってます。

ソロ初のツアーも決定! どんな内容に……?

──こういう時期だから余計ですよね。で、7曲目は「ツキミキミ (Rearrange Ver.)」。曲自体は一昨年のアルバム『Be』に収録されていたものですね。

伊藤 そうなんです。初めて配信ライブをやった時にリアレンジをかけたバージョンが入ってるんですけど、このバージョンがファンの皆さんに好評だったので、それをそのままアルバムに入れて再度お届けしますという形ですね。

──この7曲が『sheer』というアルバムを構成しているわけですが、7曲が揃ったところで改めて、「sheer」という言葉に対する想いや自分の中での意味合いが変わってきた部分、感じたものというのはありましたか?

伊藤 曲が出揃った時に、本当にテーマ発信の楽曲たちだったので、集まった時に本当に「sheer」が合うかというのは、一度頭の中で考えました。でもやっぱりこの言葉以外にハマるものがなかったし、自分が「自分ノート」に書いた言葉たちがそれぞれの楽曲にハマっていたので、やっぱり私が書き出した気持ちが「sheer」になって、その「sheer」から派生されている楽曲だから、やっぱりこのタイトルは譲れないな、という確信に変わりましたね、その時に。

──例えば「mountain」なら「山」、「bird」なら鳥というような単語と違って「この意味」とはハッキリ言いづらい単語だからこその、楽曲の広がりでもあるわけですよね。

伊藤 そうなんです。この単語一つだけでもいろんな意味があるんですけど、この前とか後とかに何かくっつくことでまたいろんな意味になったりするんですよ。例えば「sheer off」だと「人を避ける」という意味になったりして、それがまた面白いなって。そうやって自由自在に変わる「sheer」が、楽曲にも響いてる感じがするんですね。だって自由じゃないですか、鳥の鳴き声に子供の声まで入れちゃってるんだし、とか。「リトル・ミー」に関しても、ギターの演奏は「子供みたいにやっちゃって」っていうオーダーをしてたりするんです。だから意外と無邪気な感じのアレンジが入ってたりもするので、「型にはまらず自分なりにやっていこうよ」っていう私なりの表現が入っていて、「sheer」の自由自在に動く感じとリンクしてるんじゃないのかなと思ってます。

──この状況で不自由を感じていたり、いろいろ縮こまってしまっている人たちに、解放感を味わってほしいという想いも。

伊藤 そうですね。「Merry Go Round」が特にそうなんですけど、今回、裏テーマがあって。私はけっこう考えすぎてしまう性格で、「考えすぎだよ!」ってよく言われるんですよね。「もうちょっと肩の力を抜いて自由に生きたら?」って。じゃあ今回は、考えすぎず気楽にいこうというのが裏テーマの一つとしてあったので、もしかしたら、それが一番反映されているのが「Merry Go Round」だったかもしれないですね。

──なるほど。

伊藤 今の自分でいいじゃん、って。求められるものが多かったり、「こうしてほしい」というものがあったりすると、それに応えようと頑張っちゃうんですよ、自分の力量も足りないのに。でもそれが、やっぱり無理してるなと。無理せず、今の自分でできることをやれば楽しいんだから、やっぱり無理はよくないなというところにたどり着いたのが、今回の「Merry Go Round」です。


──「“気楽にいかなきゃ”と考えすぎる」ということはなかったですか?(笑)

伊藤 「気楽にっていうのも考えすぎるんだから、それがまずダメなんだよ」って、最初からいっぱい注意されました(笑)。「だーかーらー」って。でも、それは周りのスタッフさんたちが一番よく分かってくれてるので、そうやって声をかけてくれて、「ハイ、また考えすぎ!」「もう一回ゼロからやろう!」っていう風に、私が気楽にできるようにということに協力してくれた仲間たちやクリエイターの作品でもあるんですね。そうやって私のことを汲んでやってくれた1枚です。

──作品全体を通して心地よさが感じられたんですが、それはそういったところから醸し出されていたんでしょうね。

伊藤 そうだと思います。みんな、私のことをよく知ってくれている人たちなので、私が「この気持ちを言葉にしたら、何て言ったらいいんだろう?」って考えてる時も「千晃だったらこういう表現はしないね」「こういう感じじゃない?」っていろいろと提案してくれるんです。そういう風に他から見た「伊藤千晃というものはこうだよね」という想いも乗っかってるから、そう聞こえたのかもしれません。

──さて、7月から9月にかけてはZepp Tourが決定していますね。

伊藤 はい。ソロになってから初のツアーになるので、本当にワクワクドキドキしています。やっぱりライブが一番好きな人間だったから、やっと実現できるのはすごくうれしいですし、今回は『sheer』を引っさげてのツアーになるので、この作品の世界観を盛り込みたいと思っています。コロナなのでどうなるかはまだハッキリと分からないですけど、マスク着用だったり歓声はあまり上げちゃいけないという状況の中でも、何か楽しめるような演出だったり世界観だったりを大事にして、自分自身が楽しめるライブというものに振り切って作っちゃおうと思っています。

──そこも気楽に。

伊藤 そうなんですよ(笑)。今までは「来てくれるファンの子がどれだけ楽しんでくれるかな?」「どれだけ声を出せるかな?」「どれだけ熱量を高くできるかな?」というのを重視してきたんですけど、それが今回、コロナで本当にひっくり返されちゃったから、だとしたら自分、伊藤千晃自身が「これ最高じゃない? 楽しくない?」って思える気持ちを優先した方がいいんじゃないかと思って。それを優先的に持ってきつつ、『sheer』の世界観というのも演出に入れながら、いい感じの曲の並びと演出を作っている最中です。

──伊藤さんの下半期はまさにこのツアーからという感じだと思いますが、この時期にはいろんな世の中の状況ももっとよくなるといいですよね。

伊藤 本当にそう思いますね。本当にどう動くか分からない中、プランも立てづらいなと思うんですけど、それは本当にこの『sheer』につながっていて、「どんなことが起きようとまあ気楽に、それに対応していこうじゃないか」と。そもそもプランなんて練っても、何かが起これば崩れてしまう世界なんだから、プラン立て自体しなくてもいいんじゃないかと(笑)、『sheer』を作ってみて、そういう風に少し気楽な自分が出てきました。

──そういうお気持ちの中で恐縮なんですが、下半期はどうしていきたいですか?

伊藤 とは言えプランは必要ということですね(笑)。一応プランがあって、私たちもどこを目指していこうというのが明確にならないと、スタッフと一緒に頑張っていけない部分もあると思うので。今は、まず初のZeppツアーを成功させること、そしてできれば音楽も止めずに、皆さんにお届けしていければというのも目標としてはあります。あと、私はけっこういろんなジャンルの活動をやらせていただいていて、自身のブランド「KIKI AND DAYS」も、もともとただのアパレル・ブランド、ライフスタイル・ブランドに留まらず、「KIKI AND DAYS」が人と人とをつなぐコミュニケーションの場になってくれたらと思っていたんですね。今、顔が見えないSNSとかが流行っている時代ですけども、幸せを感じる時というのはやっぱり人と人とがつながった時なんじゃないのかと思うので、そういった、本当に大切にしたい部分とかを、ブランドだったり音楽だったりで表現していけたらいいなと思っています。

──やることがたくさんありますね。

伊藤 そうですね、けっこうたくさんやらせてもらってるので(笑)、今年はちょっと頑張り時かなと思ってます。その上で、世の中の状況がもっとよくなれば言うことなしなんですけど、「期待しすぎないように」というのは自分に対して言い続けています。ライブが決まってうれしいという気持ちはもちろんありますけど、世の中に対して柔軟に考えていかないといけないから、やっぱり皆さんの安全を第一に優先しないといけないし……となると、何かあった時に落ち込むと引きずるタイプなので。そこは自分とのバランスを取りながら(笑)、進めていける1年であったらいいなと思っています。

──分かりました。ありがとうございました!

撮影 長谷英史


『sheer』
2021.6.23 ON SALE

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『Chiaki Ito Zepp Tour 2021 -sheer hearts-』

<大阪公演>7月4日(日) Zepp Namba
①開場14:15/開演15:00 ②開場17:45/開演18:30
<愛知公演>7月31日(土) Zepp Nagoya
①開場14:15/開演15:00 ②開場17:45/開演18:30
<福岡公演>8月14日(土) Zepp Fukuoka
①開場14:15/開演15:00 ②開場17:45/開演18:30
<神奈川公演>9月20日(月・祝) KT Zepp Yokohama
①開場14:15/開演15:00 ②開場17:45/開演18:30

※行政の指示により夜の部の開場開演時間が早くなる可能性が有りますので予めご了承下さい。

【チケット料金】
全席指定 ¥7,800(税込)
※小学生以上有料。未就学児童は入場不可。
※ドリンク代別途600円必要。

【問い合わせ先】
大阪公演:キョードーインフォメーション 0570-200-888 (10:00-18:00)
名古屋公演:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100 (10:00-18:00)
福岡公演:キョードー西日本 0570-09-2424  (平日・土11:00~17:00)
神奈川公演:KM MUSIC 045-201-9999 (平日 11:00-18:00)

【伊藤千晃Official Website】
https://avex.jp/itochiaki/
【伊藤千晃ファンクラブ「CHEERSTIME」】
https://cheerstime.fc.avex.jp
【伊藤千晃Instagram】
https://www.instagram.com/kikichiaki/
【伊藤千晃Twitter】
https://twitter.com/chiakiki_ito

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記事情報

高崎計三

ライター

高崎計三

1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。