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【SKY-HIインタビュー】ストレスフルだから生まれた『八面六臂』【理詰めからリゼロへ】

SKY-HI

【SKY-HIインタビュー】ストレスフルだから生まれた『八面六臂』【理詰めからリゼロへ】

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「ジャンル無用、ルール無用、あるのは音楽への愛のみ」というキャッチコピーがつけられたニューアルバム『八面六臂』をリリースしたSKY-HIさん。昨年、コロナ禍の状況でもとどまることなく「#Homesession」をはじめとした創作活動を続け、そして自らの会社BMSG設立とオーディション「THE FIRST」開催と精力的に動いていた彼が、その中で制作して発表した楽曲、いろんなアーティストとの共演、そしてこのアルバムのための新曲と、まさに“今の集大成”という作品となっています。その成り立ちから、出来上がっての感想まで、タップリと語っていただきました!

アルバム序盤の原動力は、怒りやストレスといった“負”の感情

──まず『八面六臂』というアルバム・タイトルは、ご自分で考案されたものなんですか。
 
SKY-HI そうですね、それはもうもちろん。考案というか、“口をついて出た”くらいの方が正しいかもしれないんですけど。
 
──アルバムの内容というよりも、このところの活動を象徴しているような言葉に感じられたんですが。
 
SKY-HI そうなんですよね、自分もそう思います。ただそれで考えたというよりは、もともとは別のタイトルで進行してたんですよ。そしたら諸事情でそれを変更せざるを得なくなって、「30分以内にタイトルを変えれば、ジャケットのデザインだったり、もろもろ間に合うということだったので、その電話の中で、「じゃあ『八面六臂』でお願いします」と言って。よくよく考えると、そういうのが多いんですよ。曲中でもそうなんですけど、本当にその瞬間での感情や、見えているものをそのまま言葉に落とし込むことに成功したというべきか。そのくらい時間がなくて、スタジオのスケジュールを曲ができる前から決めちゃって、「今日中に完成させないとアルバムが出ない」みたいなことを3曲くらい繰り返してたので、あまり計算がなかったアルバムでもあるんですよ。それが逆に純度を高めてくれて、深層心理がそのまま出やすくなったというのはすごくよかったですね。もう1回やれって言われたらちょっとイヤですけど。
 
──ではその『八面六臂』という言葉も、意識はしていなかったかもしれないけども、深いところには存在していたと。
 
SKY-HI そうですね。『八面六臂』なんていう言葉を、自分の作品に使うとは思ってなかったです。しかも、ジャケットのデザインはちょこちょこ作っていたんですよ。今回は顔ジャケで、顔ドンで行こうということでデザインを決めてて、そこに『八面六臂』と載せようと思うかと言われると、多少考える時間があったらてらってたかもしれないですけど、その時間がなくてよかったですね。

──アルバムの中でも、実際にSKY-HIさんのやったことは『八面六臂』という感じですか。
 
SKY-HI もともと、「ジャンル無用 ルール無用 あるのは音楽への愛のみ」というキャッチは先に作っていて、それが元のタイトルにつながるという感じだったんですけど、実際『八面六臂』にしたら、もっとしっくりきました。「こんな曲まで!?」っていう感じを自分で感じられたので。
 
──聞かせていただくと、12曲の最初から最後まで、何というか「詰まり具合がすごい」というか、聴きごたえの塊みたいな印象を受けました。なので、既発曲も含めた全曲について語っていただきたいんですが。で、1曲ずつの話に入る前に、1曲目の「To The First」から4曲目の「Oh s**t!! feat. SKY-HI / s**t kingz」までを聞いた時に、この雰囲気を言い表す言葉が、何かあったよなと思ったんです。
 
SKY-HI はい、何でしょう?

──怒りも含めた激しい感情が確かにあるけど、ドカーン!と爆発させているわけではない。つまり、すごく「ドスが利いてるな」と。
 
SKY-HI なるほど、「ドスが利いてる」! ありがとうございます(笑)。
 
──ここまでの頭の部分の4曲というのは、意図してそういうムードで固めたということなんですか?
 
SKY-HI いや、そういうわけでは全くなかったですね。
 
──そうなんですか!

SKY-HI 全くなんですけど、ただ一つ言えるのは、製作時期が全部BMSG設立発表前だったのでそういうベクトルの曲が多かったんでしょうね。一方の今は、初めて事務所の社長という立場を1年やって、オーディションも終わりそこから出るグループの今後のこともあって、抱えているストレスや不安や責任はありますが、気持ちは凄く前向きです。一年前の曲を聴くと、強いストレスや鬱憤を感じますね。

──それが曲に出たと。
 
SKY-HI 「To The First」はアルバム全体のテーマソングみたいな感じなのでまたちょっと違いますけど、「Simplify Yourlife」から「Oh s**t!!」までは、よりそんな感じで。「Simplify Yourlife」は、モロにコロナ禍の時に作ったので特にイントロなどにより孤独感がありますね。「Mr. Psycho」だったらSUNNY BOYの家、「Oh s**t!!」は自分の家にs**t kingzが来てくれて、人とセッションして生まれているものではあるんですけど、言葉やサウンドにしないと昇華されないストレスとかが、メッチャあったんでしょうね。継続してるところもある程度ありますが。


──今言われたように「To The First」は、アルバムの方向性を示すような感じがあるんですけど、ただそれも、何というか、パワーを秘めてる感がすごくありますよね。だから4曲目までが塊に聴こえたというか。
 
SKY-HI 何か、エナジーがすごいですよね。負の感情って悲しいことですけど、アートにとってはいいことも多いですよね(笑)。ただ「Oh s**t!!」の直接的な表現については、s**t kingzの不満を俺がぶちまけるというイタコ・スタイルだったので、完全に自分の感情ではないのですが、自分のスタイルや感情と上手く混ざり合ったものになりました。s**t kingzとやる以上、ちょっとコミカルにはしたい感じもあったので、カッコいいけどコミカルなものがいいなとか。でも、やっぱり歌うのが自分なんで、けっこう自分のことだとか、自分の周りの事象みたいなのをちょっと混ぜて書いてみたいなところでは、けっこう遊びましたね。

──ただ、この曲群が前半に来ることで、アルバム全体がその方向性だと判断されてしまうかもという心配みたいなものはなかったですか?
 
SKY-HI それは、わりとアーティスト・ジレンマみたいなところがあるんですけど、どこか一方向だけ切り取られるとするなら、この方向で切り取られる事はサウンド面も含めて好意的です。自作トラックも多いし。後半ではまた入ってくるけど、4曲中2曲が自作トラックで、「To The First」はTHE FIRSTのテーマソングでもあるけど、自分自身のテーマソングでもあるので、そこからのエナジー、パッションをちょっと強めに出すことが一番正解でしたね。1曲目は「To The First」しか考えてなかったので。最後にするというのも考えたんですけど、それはちょっとまた追って。
 

なぜSKY-HIは、自分の作ったアルバムを聴いて驚いたのか?

──で、そのムードで4曲目まで来たところで、次の5曲目が「Tomorrow is another day feat. Michael Kaneko / THE SUPER FLYERS & SKY-HI」。これがまた打って変わって、何か安心しちゃうほどレゲエなので、ここでのコントラストがすごいなと思いました。
 
SKY-HI 正直、そこは大変でしたね。インタールードを入れた方がいいかもとすら思いました。実際、インタールードを入れてあげればよかったかな?と考えましたが、あえてこの感じがいいですよね。
 
──この曲をインタールード扱いすると失礼ですけど、でもそれに近い役割も持っているような。
 
SKY-HI あとそうそう、「Tomorrow is another day」までは超一人称の曲で、次の「me time -remix- feat. Aile The Shota」がわりと二人称の曲だったりするから。「Tomorrow is another day」は、自分語りみたいなところもけっこう多いじゃないですか。で、フックでマイキーが出てきて、やっとちょっと二人称目が開けるみたいなところがあって、そこからの「me time」は大事にしたかったので。確かに、インタールードって言うと……「Tomorrow is another day」にちょっと失礼じゃないですか!
 
──あっ、すみません!(笑)
 
SKY-HI でも、「me time」につなげるためのパスを出す役割みたいなところはありますね。
 
──だから「me time」、「Dive To World feat. Takuya Yamanaka (THE ORAL CIGARETTES)」あたりでちょっとスローダウンしていく感じなので、そう考えると「Tomorrow is another day」はキレイに間に入ってるなという。
 
SKY-HI 本当に今回のアルバムは全部、作ってから言語化してるっていう感じで、すごい自分の中でも不思議な音楽体験なんですけど。今まではだいたい、後付けがあまりないというか、計算と研究の結果、構成、構築させていくということが本当に多かったんですけど、今回はとりあえずやっちゃって、なぜ自分からそんなものが出てきたのかっていうのを後で考えることが本当に多くて。曲調や音数で言ったら、「Dive To World」が「Oh s**t!!」の後にあっても不自然ではないんですけど、「Dive To World」以降は、猛烈に“人”を感じる曲が続くんですよね。そこまでは基本的に一人称だったりするから、「Tomorrow is another day」と「me time」で、“人”に出会いたかったんでしょうね。そして、それがあってからのほうが、バディものである「Dive To World」と、「Holy Moly Holy Night / ちゃんみな & SKY-HI」……これは“バディもの”というにはちょっとアレですけど(笑)……があったりするのがよくて。結局、この1年をそのまま描いたようなアルバムに、最終的にはなっていたので、自分が感じていたり、見ていたりした感情の流れや出来事の意味を、そのままアルバムで表現できていたことに衝撃を受けました(笑)。

──自分でも?
 
SKY-HI 自分でもビックリしました。ツルッと聴いた時に、「うわうわうわ、すごっ!」ってなりました。
 
──では全体の曲順というのも割とスッと出てきた感じだったんですか?
 
SKY-HI 相当スッとでしたね。秒でした。これまではオリジナル・アルバムだと、作る前から決めてたりすることのほうが多いんですよ。でも今回は初めて全作録ってから考えたのにサクサクサクッと決まって、特にひっくり返したりもなかったかな。悩むことが一つもなかったですね。


──今作はフィーチャリング・アーティストが多くいますが、特に「me time」ではAile The Shotaさんと「Dive To World」ではTHE ORAL CIGARETTESのTakuya YamanakaさんあたりはSKY-HIさんとの関係性が対照的ですよね。
 
SKY-HI 本当に、フィーチャリングのためのフィーチャリングが存在しないというか、客演のための客演が存在しないのにたくさんの意識が一つのアルバムに存在している事が本当によいことだなあと思うんです。今まで客演に呼ばれてやることは多くても、自分の作品にはそんなに客演を呼ばなかったのは、組み合わせ優先のマイクリレーとかでもないとストーリーに他人の意識が介在する余地があまりなかったからです。今回は本当に普段の関係性がそのまま曲の中に出るような客演しかないので、それをすごく美しいですね。すごい、最高だと思いますよ。

──で、「Holy Moly Holy Night」なんですが、この曲の場所もスッと決まったんですか?
 
SKY-HI これに関しては、曲順を決め出す前は正直無理だろうと思ってたんですよ。「こんなもん、入れる場所ないだろう」と思ってたので、この曲をアルバムに入れようとなった時点で、コンセプチュアルなアルバムになることはもう諦めてたんです。でも本当に曲順が上から順番にスポン、スポンと決まっていって、「Dive To World」の後に「Holy Moly Holy Night」だなというのがすごくしっくりハマったので、何とも言えないですね(笑)。時間がかかったのは確かですし、普段のアルバムみたいに、最初からこういうとこに入れようと思って作った曲じゃなかったから、実際に曲を並べ始める前は、「こんなもんボートラ(Bonus Truck)しか無理だろう」と思ってたんですけど、ものの見事にハマりましたね。
 
──これも計算ではなかったということですね。
 
SKY-HI 今回のアルバムは「何を言ってるか」と同じくらいかそれ以上に、誰かと一緒にやってるときの空気感そのものの方が大事だったりするなあと思いますし、そこにこそメッセージがあるような気がします。「Holy Moly Holy Night」でのちゃんみなとの関係性とか、「Dive To World」でのTakuyaとの関係性とか、「14th Syndrome feat. RUI, TAIKI, edhiii boi」とかもそうだし、その空気みたいなものを作品に閉じ込められたことで、楽曲で歌ってること以上にストーリーが詰め込めたような気が本当にするので、ここくらいからだんだん、聴いていくとエモーショナルな気持ちになってきますね。「Simplify Yourlife」あたりは「1人のままでもいい」って歌ってるところから始まってて、それがこのあたりからすごくエモくなってくるんですよ。「1人じゃないの最高じゃん!」っていう感じになってるので(笑)。本当に狙ったわけじゃないけど、フィーチャリング・アーティストは性別や年齢や国籍もバラバラだし。

──特にこの曲は、やっぱりどう考えても空気が変わると思うんですが、改めて聴くと、すごくオールドスクールなロックンロールだけど、音はガッツリ今の音でやると、こんなに楽しいんだ!という。
 
SKY-HI そうですね、曲自体はリトル・リチャードの時代ですからね。俺も「いい曲だなあ」と思いましたし、「まだ今年のクリスマス間に合うよ」と思いました(笑)。

“ウチの事務所”の方針を示すことができた「14th Syndrome」

──そこから「14th Syndrome」です。これは「THE FIRST」のオーディションがあったからこそ生まれた曲だと思うし、そしてこの曲の歌詞に、自らのこれまでの道とこれからの決意みたいなものが込められていることが、すごく意味のあることだと感じたんですが。
 
SKY-HI これからを描こうとは全然思っていなかったんですけど……確かに、そんな感じがしますね(笑)。これも、「みんなで楽しく曲を作る」ということが本当に大事で、テーマに関しても、計算と構築で作ったわけではなくて、本当に話の流れでこうなったんですよ。みんなでオンラインで打ち合わせしてるときに、さて、曲のテーマは何にするかってことを振られて、本当に突発的に出てきました。ちょうど20歳違うから、みんなは20年後のことを書いて、俺は20年前のことを書いて、「20年後こういうふうになってるぞ」っていうのと、「20年前はこんな感じだったぜ!」ってのをやったら面白そうだよねみたいなことをまた適当に言ったんです。そしたらみんながいいね!って楽しみながら、踊りながらレコーディングして、いざ自分のバースを書こうと思って、みんなの声を録った後にブースに入って歌い始めたんですけど、4小節くらい歌ってったら、「20年前のはずなのに、今と全然変わんないじゃねえかよ」と思って(笑)。

──そうなんですか(笑)。
 
SKY-HI でも本当に、彼ら、特にRUIはウチの事務所のトレーニーだし、edhiii boiも契約を予定しているアーティストだから、事務所の社長と曲を作るっていう言葉で皆さんはどう想像するか分かんないんですけど、ウチの場合は本当にこんな感じというか(笑)。「楽しいのが一番だよね」っていう感じなので、それが込められたのが本当によかったですね。

──そういう意味では、一般に想像される「事務所の社長」感と、実際に「事務所の社長」である今のご自分の姿には、かなりギャップがありますか?
 
SKY-HI それはメチャクチャありますね。メチャクチャあるし、どっちかと言うと、俺はもうこのやり方が正しいと思うし楽しいと思います(笑)。でもたぶん、日本の大きな事務所は基本的に20年くらい前に芸能バブルが起こってしまって、巨大なシステムになってからは、大企業病のような状態だと思うから、簡単に変えられないのも理解できるし、簡単に変えられるほど、本当に、アーティストのことを理解できるような人が存在しないこともわかるんです。でも自分の場合はそもそもバチバチで現役だから、アーティストのことを考えるも何もアーティストそのものなので、そういう意味では日本で一番適性が高いんだと思います。それに、本当にたまたまだけど、今までラッパーとして、アンダーグラウンドからロックカルチャー、ダンスミュージックと、いろんなところのいろんなアーティストと、いろんな絡み方をして、いろんな曲をやって、大衆的なことからもっと専門的なところまで見た上で、今、社長業をスタートできてるのは、タイミングとして最適な気がしますね。
 
──その意味では、そのやり方を示せた曲ということでもあるわけですか。
 
SKY-HI そう言うと、そうですね。今話してて初めて思いましたけど(笑)。edhiii boiはやっぱり気合入ってたけど、でも、いい意味であんまり緊張はしないでみんなやれてたので、それはウチのカラーとして、ちゃんと打ち出していきたいですね。もう社長室でふんぞり返る社長の時代ではないということは確かだと思います。

──やっぱりこのタイミングでこの曲があって、それがこのアルバムに入るということには、やはり大きな意味がありますね。
 
SKY-HI そうなんですよ。意味は、今となっては本当にあるんですよね。すごく意味があるんですけど、計算してやってたことでは全然なかったので、本当に本能のままにやったら、ちゃんと理由があったというのは、すごく自分の中でも嬉しいことですね。


──で、10曲目から12曲目にかけて、雰囲気としてアルバムのクロージングに入っていくのかなという印象を受けたんですが。
 
SKY-HI ですよね。クロージングに入っていくような雰囲気を、俺も受けました。何を言ってるか分からないと思いますが、ありのままに今起こったことを喋ってます(笑)。(ジョジョの奇妙な物語のモノマネをしながら)

──作ったご本人ですよね(笑)。
 
SKY-HI 実際「あ、クロージングに入ろうとしてるな」と思ったんですよね、俺自身も。これも全然計算したことじゃなくて、いや、俺もビックリしてるんですよ。綺麗で。
 
──綺麗。
 
SKY-HI 綺麗になんてなるわけないじゃんと思ってたんで。ちゃんとしたアルバムを作るなんて、もう本当に構築に構築を重ねて、コンセプトにコンセプトを重ねて、やっと生まれるものであって、こんな、思ったことをそのままみたいなやり方で、綺麗なものになんかなるわけないと思ってたら、綺麗なものになっちゃって、ビックリしてます。
 
──それこそさっきの「Holy Moly Holy Night」と一緒で、このクロージングらしい3曲の中にはシングル曲もあるし、新曲もあるし、それぞれにフィーチャリングも違うわけじゃないですか。だけど、綺麗な流れができているという。
 
SKY-HI そうなんですよ、不思議なんですよね。

──先ほどから曲順は感覚的なものだったということでしたが、「One More Day feat. REIKO」を最後に置いたのには意味がありますか?


SKY-HI あるんですけど……何かもうレコーディング途中から、これだけはアルバムの最後の曲になる予定だった気がします。他の曲ができてる状態でこれを録ってるけど、これで締めたいなあと思った記憶はあります、確かに。記憶はあるが、そのために何かをしたことも同時にないという感じですね。ラストっぽくしようとは、一個も考えてないですね。ただ、歌ってることも伏線を回収しているようにな感じで、けっこう感動しちゃいました。本当にそこらへんは何も考えてなかったので、別に最後の曲にならない可能性もあったし、録ってる時は本当に何も考えてないので(笑)。作りながら、最後に並べて聴いていったら、「To The First」で言っていたようなことから、「Simplify Yourlife」であったり、最初に言っていただいた頭の4曲で、他者と交わる素振りもないですし、「Simplify Yourlife」は「1人のままでもいい」って言ってるし。「To The First」は、そもそも「居場所がない、なら自分で作るさ何でもあり」って言ってるくらいなんですけど、それが最後の「One More Day」では「今までずっと孤独だった」と過去形から始まって、今はもう全然孤独じゃないという。この曲は明確に“君”が出てくるので、それはメチャクチャうれしかったですね。何か、感動しちゃいました。

──そうですか。
 
SKY-HI そんなの、普通なら全然当然なんだけど、去年の4月のコロナ禍で「Simplify Yourlife」を作っている時に、「それを過去形にするような1年にしてやろう」なんて思っているわけもないんで、ほんの些細な、それでいて掛け替えの無い出会いの連続だけど、それをフィーチャリングアーティストの皆が存在で証明してくれて、最終的にそれが過去形で歌える日が来てるんだなと思うと、感動しちゃいましたね。本当にビックリしましたね。
 

音楽に誠実に向き合っていることを確認できたアルバム!

──ただ、先ほど「To The First」を最後にするという案もあったというお話がありました。
 
SKY-HI 案というか、シンプルに「To The First」を作ってる時から、おそらくアルバムを作ったら、この曲は頭かケツだよなっていう、そういうレベルのものだったんですけど、最近、ちょっと気がついたことがあって。
 
──何でしょう?
 
SKY-HI この1年間は、自分の人生の中でも本当に激しい動きの1年間だったし、だからこそ生まれたアルバムだったのがこのアルバムなんですけど、なんか曲順を逆から聴いていくと、「THE FIRST」を始める前の自分のストーリーにもなっているような気がしたから、本当に一人で音楽を始めたところから、バンドだったりダンサーだったり、本当に自分の音楽を一緒に愛して鳴らしてくれる仲間がいて。とはいえ、やっぱり一人で外側の世の中と渡り合っていくわけで。逆に聞いていくとね、「THE FIRST」を始める前の自分の覚悟と決意に至るまでの話にも感じられて、すごくエモかったんですよね。
 
──通してしっかり味わったら、逆の曲順でも楽しめると。
 
SKY-HI 逆の順番から聴くとですね、違う聞こえ方がありますよ。配信しようかな、それで。
 
──いいですね。うん。でも、それも全く計算できてたわけでも何でもないわけですよね

SKY-HI 全くですね。ただ、美しく流れができてたから、そういうことが起こるんだろうなと思いました。
 
──それこそ各曲の成り立ちから言うと、時期もある程度幅があって、既発曲もあれば新曲もあって客演もあって、本来だったらオムニバス・アルバムになってもおかしくないぐらいですよね。
 
SKY-HI 最初はもうオムニバス・アルバムにしかならないと思ってました。「Oh s**t!!」「Holy Moly Holy Night」とか、キャラもこれだけ濃いヤツとかを収録していく方針にした時点で、もうそのつもりだったんですけど、全然そんなことない立派なオリジナルアルバム、立派なコンセプトアルバムができちゃって、ビックリしちゃいました。

──結果的にそうできた自分に、改めて自信が持てたりというのはありますか?
 
SKY-HI 自信というよりは、音楽にちゃんと誠実に向き合ってることだけは確かだなと。それはすごく嬉しかったですね。初めての経験すぎて。いつもはアルバムを作るとなったら、こういう曲がこういう音像でここに来て、なぜならここでこういうのが来るから、みたいなパズルの組み立てがあるわけですよ。
 
──理詰めで。
 
SKY-HI そう、「理ゼロ」なんですよ、今回。「リゼロ」ってアニメありますよね。
 
──あー、「Re:ゼロから始める異世界生活」ですね(笑)。
 
SKY-HI この記事のタイトルに、「Re:ゼロ」って入れといてください。間違ってクリックする人がいるかもしれないんで。……間違ってクリックされたから何だって言うんですか!(笑)
 
──「Re:ゼロ」のファンの方が間違ってクリックしたら、ガッカリしますよね(笑)。
 
SKY-HI そうですよ! 何でただしゃべってるだけでガッカリされなきゃいけないんですか! 悪ノリするからですよ!
 
──えー、悪ノリしたのは誰でしょうということで(笑)。さて、「avex portal」では昨年6月にリモート取材をさせていただきましたが、その時はもうガッツリ緊急事態宣言も出ていて、コロナで動けないっていう中でも、止まらなかったですよね。
 
SKY-HI そうですね。止まる気配だけはなかったですね。
 
──それも、こうなった結果には大きく影響してるんじゃないですか。
 
SKY-HI それはあると思います。だって、そうじゃなかったら、今の状況で新曲を作ってアルバムをリリースすることもできないと思うし、何かこう、それだけは別腹というかね。どんな状況でも、作ることだけはやめないみたいなのは、去年から決めてたから。そのマインドセットがそもそもなかったら、このアルバムもできてないと思うし、おっしゃる通りかと思います。
 
──このアルバムが世に出た後は、どう進んでいきたいですか?
 
SKY-HI ツアーを回りますよね。本当に今は、アーティストとしてはすごく気持ちが楽というか、すっきりしてるというか。何だろう、社長業目線からすると、大変なことがいっぱいあるんですけど、そっちが負荷を背負ってくれているんだけど、アーティスト目線としては全部つながっているので、社長である自分とプロデューサーである自分とアーティストである自分が、すごくシームレスなので、すごくやりやすいですね。だから、このアルバムがそうだったように、実生活というか実態と、音楽がより密接な距離でいられるので、無限に作れる気もするし、やっぱりライブも頑張りたいし。時間がない以外はすごく光が見えることが、今すでに多いですね。来年やりたいことも決まっているし、来年やろうとしてることもあるし。アーティストとしてはそんな感じですね。
 
──なるほど。
 
SKY-HI で、「Mr. Psycho」とか「Simplify Yourlife」とか、ひょっとしたら「To The First」も含めてみたいなところが持ってる、爆発させるための鬱屈とした気持ちというか、消化させるためのそういう材料はたぶん、社長業のストレスがあるので大丈夫かなという気もするし。ガソリンも担保されてるし、そこがストレスなくやれる日っていうのはどうやら来ないと思うので(笑)。うん、どうやら経営者が一番つらいっすね。なので、おかげさまでガソリンもあるし、さすがに今はちょっと大変さがピークですけど、来年の9月、BMC設立2周年くらいまで本気で頑張れば……長えな!(笑)
 
──(笑)
 
SKY-HI そこらへんまで本気で頑張れれば、よりいろいろと、もう一個綺麗になっていくのかなと思うし。難しいですね、そう考えるとストレスはやっぱりなきゃダメなんだろうなあという気もしちゃいましたね、今話してて。なきゃダメなんだろうというか、なくなる日も来ないんだろうなって感じて、絶望的な気持ちになりました。それを望んでいるような気もするし。
 
──それが原動力になる部分もあるわけですもんね。
 
SKY-HI どうやらそのようですね。ずっとストレスフルな環境に置かれていたからこそ、作品を作ることをやめなかったし、そういう意味で本当に自分の音楽への依存度が果てしなく高いので、コロナ禍でも歩みを止めるという選択肢だけは浮かばなかったわけで。
 
──しかも、これからはより動けるようになりそうな社会情勢じゃないですか。
 
SKY-HI そうですね、そういう意味での希望もいっぱいあるかな。当然ツアーもやりたいけど、それだけじゃないぞという気がしますね。他の所属アーティストのことも含めて考えることはたくさんありますけど、なんかすごく前向きですね、状況として。まあ当たり前なんだけど(笑)。当然、ストレスとかプレッシャーとか不安とかはちょっと多いですけど、状況は本当に前向きだと思います。
 
──そこからまたいろいろと生まれそうで、楽しみですね。ありがとうございました!
 

撮影 長谷 英史


『八面六臂』
2021.10.27 ON SALE

 

 
【BMSG Official Website】
https://bmsg.tokyo/
 
【SKY-HI Official Website】
https://avex.jp/skyhi/
 
【Instagram】
https://www.instagram.com/skyhidaka/
 
【Twitter】
https://twitter.com/SkyHidaka
 
【Ameba blog】
https://ameblo.jp/sky-hi-blog/
 
【Facebook】
https://www.facebook.com/skyhi19861212
 
【YouTube Channel】
https://www.youtube.com/user/SKYHICHANNEL
 
【Subscription】
https://avex.lnk.to/SKY-HI_music
 

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記事情報

高崎計三

ライター

高崎計三

1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。