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【珀】TVアニメ『キングダム』エンディング・テーマ「眩耀」は“推し活”から始まった!?

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【珀】TVアニメ『キングダム』エンディング・テーマ「眩耀」は“推し活”から始まった!?

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1st Single「眩耀」をリリースしたシンガーソングライターの珀さん。これまでYouTubeでアニメや漫画のキャラクターからインスパイアされたオリジナル楽曲を発表して話題になってきた彼女ですが、この「眩耀」はTVアニメ『キングダム』のエンディング・テーマに採用されています。顔も公開しておらずミステリアスな彼女に、これまでのこと、楽曲のことや制作のこと、そしてアニメや漫画のことなど、いろいろと伺いました!

「このキャラクターを知ってくれ!」という“推し活”として始まった活動!?


──まずは、珀さんがどういう方なのか、というところからお聞きしたいと思います。YouTubeでの活動は2020年12月からということですが、そもそも創作活動、音楽活動はいつ頃から?
 
 けっこう長いですね。もともとDTMは好きだったので、YouTubeに上げたりし始める前から曲はつくっていました。

──作詞・作曲・編曲とご自分でこなされるんですよね。音楽そのものにはどこから入ったんですか?
 
 3歳とか物心ついた頃から、歌うのがすごく好きだったんですよ。最初はアレンジとか全くできなかったので、ただただ自己満足で歌詞を書いて、誰に聞かせるでもなく作っていた感じですね。ピアノとかも独学で始めました。
 
──音楽的なルーツというとどの辺なんですか?

珀 歌ものよりもインストものを聴く機会が多かったので、久石譲さんにはすごく影響を受けました。アレンジ面はそこがルーツかなと思います。
 
──そういう過程を経て、YouTubeでの活動を始めた時から「珀」という名前で?
 
 そうですね。YouTubeを始めた時点で「珀」になろうと決めました(笑)。お父さんがつけてくれた名前なんですけど……何ででしょうね(笑)。
 
──一見、見慣れない字ですが、「琥珀」の「珀」なんですね。
 
 そうなんです。琥珀って、すごく長い時間をかけて出来上がる樹脂の化石なのですが、珀として音楽を作り始める前にもいろいろなことを積み重ねてきたので、名前としてはピッタリだなと思って、これにしました。
 
──ちなみに、ここまで顔を出されてないのは?
 
 先入観を持たずに音楽を聴いてほしいなというのが、一番の理由ですね。
 
──YouTubeでは、アニメや漫画のキャラクターを独自に解釈したインスパイアソングで注目されました。これはどこから?
 
 もう半分趣味みたいな感じです。私はもともと漫画・アニメが大好きなので、推しキャラクターの誕生日曲を作ろうというところから始まって(笑)、推し活の二次創作みたいな感じで1曲目を出して。そしたら思ったより多くの方に聴いていただけて、2曲目、3曲目と、そのコンセプトのまま続けてきた感じです。
 
──創作意欲が湧くのはどういうキャラですか?
 
 「ザ・主人公」みたいなキャラではなくて、原作ではあまりスポットライトが当たらないけど、いいキャラクターっているじゃないですか。そういう人に対して、「セリフにはないけど、このシーンではこう思ってたんだろうな」とか、そういうのを想像して書くのがすごく楽しくて。ホントに趣味ですね(笑)。「このキャラクターのよさをみんな知ってくれ!」っていう布教みたいな、推し活、オタク活動の延長でやってます。
 
──それが本業になるという人も少ないですよね(笑)。
 
 そうですね。私もまさか、こんなにいろんな人に聴いてもらえることになるとは思ってなかったので、最初は「うわぁ~……」という感じで(笑)。

──最初は、そのキャラクターなり作品なりが好きな人から共感が広がっていった感じですよね?
 
 最初はそうだと思います。ただ、元ネタを知らずに聴いてくれている人もいると思うんですよね。そのキャラクターのことではあるんですけど、人によって全く違う解釈ができるように歌詞を書いているので、自分に当てはめて聴いてもらってもいいし、全然違うキャラクターを当てはめて聴いてもらってもいいように仕上げているので、いろんな目的で聴いてる人がいるんじゃないかと思います。
 
──だから、キャラソンではあるけども、公式サントラのキャラソンみたいに、ガッチリそのキャラクターのみに合わせた作品とはまた違うということですね。
 
 そうですね。キャラクターそのものというよりも、「私がそのキャラクターの立場にもしいたら」という視点で書いているので。
 

「夢かと思った」TVアニメ『キングダム』のエンディング・テーマ……「眩耀」制作の過程とは?


──では改めて「眩耀」についてお聞きしたいと思います。そもそも、メジャーデビューがTVアニメ『キングダム』のエンディング・テーマになると聞いた時にはどう思いましたか?
 
 いやもう……何か「夢かな?」と思って(笑)。「あれ? 私、今、夢見てる……?」って感じで、全然信じられなかったです。伝えられた時、けっこう軽い感じだったんですよ。「あ、そういえばエンディング決まりましたよ」って(笑)。「はあ……え?」ってなって、その日は1日中、どういうことなのか頭が追いつかなかったですね。まずお母さんに電話して「TVアニメ『キングダム』のエンディング・テーマに使ってもらえるって言ってた気がする……」って(笑)。お母さんも驚いてたんですけど、私もお母さんに話して初めて「あ、ホントのことなんだな」って実感が湧きました。

──この曲に関しては、どこから作り始めていったんですか?
 
 私の場合、すごく特殊って言われるんですけど、アレンジから入るんですよ。
 
──そうなんですか。
 
 はい。だいたいみんな、メロディーか歌詞から書き始めると思うんですけど、私はまずインスト音源から作り始めて、二胡とか中国の楽器の音を打ち込むところから始めました。そこからだんだんと、「ここはこういう歌詞を入れたいな」という感じで、歌詞と曲を同時進行で後から作っていくみたいなやり方です。
 
──その、アレンジの時点ではメロディーって……
 
 全く意識してないんですよ(笑)。
 
──それもすごいですね。
 
 アレンジの時点では、まだいろんな可能性がある状態なんです。で、作詞と作曲を同時にやっていくみたいな。
 
──詞は、作業の中で出てくる?
 
 そうですねえ。出てこない場合もあるんですけど(笑)。今回はけっこうポンポン出てきました。
 
──曲に関しては、まず二胡ありきという感じだったんですね。
 
 はい、二胡は絶対使おうと思ってました。TVアニメ『キングダム』の曲をと言われた時点で、二胡のメロディーはちょっと浮かんでたんですよ(笑)。
 
──さすが!(笑)
 
 なので、二胡を主役としたインスト音源を作ってしまおうと思って、二胡に合わせてピアノとか他の楽器を入れていった感じです。

──今回はメジャーデビューということになるわけですが、制作環境は大きく変化しましたか?
 
 今まではMacBook1台で作っていたので、容量が足りなかったり、画面が真っ白になったりっていうトラブルがあったんですけど、今回は新しくPCを買ったので、快適になりました(笑)。で、今回初めてマスタリングを頼んだんですけど、マスタリングされた音源を聴いた時に、大号泣してしまったんですよ(笑)。その時に初めて「ああ、この曲がCDになるんだな」っていう実感が一気に湧いたんですね。そこまでは全部自分の家でやっていたので、いつも通りだったんですけど、そこで初めていろいろ込み上げてきて、スタッフの方々を困らせてしまいました(笑)。
 
──それだけ、CDという形でリリースされるということが大きいわけですね。
 
 もうドキドキです(笑)。やり始めた頃は、そんなことになるなんて全く想像もしてなかったですからね。同じ推しの人に聴いてもらえたらいいなーっていうぐらいのテンションで始めてたので、こんなことになるとはって感じで。昔の自分に会ったら自慢したいです(笑)。
 
──もちろんオンエアも見ていますよね。
 
 はい! もちろん毎週、リアルタイムで見て、配信アプリでまた何度も見返してます。何度も止めたりして、「うわー、このシーンすごい~!」とか「この作画すごい! 神!」とか言いながら(笑)。
 
──それは本編だと思うんですが……自分の歌の部分は?(笑)
 
 ああ、そういうことですね(笑)。「すごい、テレビから自分の声が流れてる!」と思って、クレジットで自分の名前が出るところはメッチャ写真撮りました(笑)。今でもあんまり信じ切れてないんですけどね。「すごい、今週も流れた!」という感じで、毎週ビックリしてます(笑)。
 

──そりゃあ毎週流れますよ(笑)。そもそも『キングダム』への思いはどれほどなんでしょうか。
 
 もともと好きな漫画だったので、インスパイアソングを書きたいと思ってたんですよ(笑)。やっぱり将軍たちが主人公に思いを託していくわけじゃないですか。主人公も、託された重みから逃げずに進んでいくので、読んでると心が震える感じがして、「自分も頑張らなきゃな」という気持ちにさせてもらえるんですよね。だから気分を高めたい時とかには見返したりしますね。もちろん全部読んでるんですけど(笑)。

──この話、ガッチリお聞きしたら終わらなそうですね(笑)。さて、カップリング曲が2曲ありますが、2曲目は「Repent」ですね。これも曲調は中国を意識しているんですか?
 
 しました。これにも二胡を使っているんですけど、「二胡に電子音楽を組み合わせたら面白いだろうな」と思って、融合させた感じにしてみました。これもオケから作って、それに合うメロディーと歌詞を作っていった感じですね。
 
──オケを作る段階で、「この曲はこのキャラでいこう」と決めていたわけですね。
 
 はい。「絶対このキャラで!」って決めてましたね。

──最初の方で「そのキャラの立場になって詞を書いている」というお話がありましたが、「眩耀」は第三者の視点、「Repent」はキャラ本人の視点で書かれていますよね。この視点の違いが面白いなと思ったんですが。
 
 「眩耀」の場合は、『キングダム』のどのキャラクターにも感情移入できすぎちゃって、選べなかったんです(笑)。なので、主人公の信の気持ちも書きつつ、信に思いを託した側の人にもなりつつということで、いろんなところから見た感じで書きました。
 
──では「Repent」のような表現の方が、珀さんにとっては通常モードというか。

 そうですね。普段はそういうやり方で歌詞を書くことが多いです。「眩耀」は、『キングダム』に関して特別に気持ちが強かったもので(笑)、今までにあまりなかった書き方に挑戦しました。


──3曲目は「空梁月落」です。まずこのタイトルについては? 漢詩の言葉ですよね?

 はい、これについては沢山調べて決めました。この曲も『キングダム』に出てくるあるキャラクターをイメージした詞になっているんですが、そのイメージに合う言葉を探して。中国の言葉なので、そこもちょうどいいなということで。
 
──「眩耀」やこの曲のタイトルもそうですが、この曲の冒頭では「晦冥」という言葉も出てきますよね。難しいというか、通常、歌詞の中では見たことのないような言葉がよく出てくる印象ですが。
 
 自分では変わった言葉を使ってるつもりはないんですけど、コメントとかでは時々言われてますね。「何でこの言葉を使おうと思ったんだろう?」とか。自分の思い浮かべているシーンに合う言葉という感じで選んでいるので、決して難しい言葉を好んで使おうと思っているわけではないです(笑)。

──この詞のイメージは?

 このキャラクターは、今まで一方向の思いしかなかったんですけど、仲間と出会うことによって自分の夢を見つけるとか、帰りたい場所を見つけるとか、とにかくそういう思いを中心に書きました。

──歌に関しては、ずーっと高音ですよね。

 そうなんですよ。自分で作る時、鼻歌を歌ったりしないで作っちゃうんです。だから「できた!」って思って歌ってみたらメチャ高かった!という事故がいつも起こります(笑)。
 
──そうですか(笑)。曲に最適だと思って作っていて、自分が歌うことは考えていないわけですね。
 
 はい。すごく練って作っているので、できたものは絶対に変えたくないんですよ(笑)。だから頭に血が上りながら歌いました(笑)。「この子に合うのはこのメロ!」と思って作っているので、「変えたら違うものになっちゃう!」と。最終的に、「私が頑張ればいいんだ」って(笑)。

──それもすごい話ですけどね(笑)。
 
 歌いながら「これ作ったの誰だろう」と思いました(笑)。顔を真っ赤にして歌ってたと思います(笑)。

ライブもやって、聴いてくれる人に直接向けて歌っていきたい!

──以上の3曲が収録されるわけですが、やっぱりYouTubeで発表するのとCDとして発売されるのでは、ご自身でも違いますか?
 
 違いますね! 店頭に並べていただけるだけで、「いいんですか……」という気持ちもあるし、自分の歌が入ったパッケージがいろんな人のお家に届くということも感動的ですね。
 
──ここからメジャーで活動していくということになりますが、どういう活動をしてきたいですか?
 
 ライブはやってみたいですね。いつもPCに向かってしか歌ってなくて、人に向けて歌うことがあまりないので(笑)。いつも聴いてくれてる人に向けて直接歌ってみたいというのはあります。

──その時は顔出しは?
 
 考え中です(笑)。どういう形がいいのかなと思って。
 
──またライブで歌うとなると、先ほどの高音問題もありますが……。
 
 ですよね! まあ私が頑張ればいいので(笑)。頑張ります!
 
──目標みたいなものってありますか? 立ってみたい舞台だったりとか。
 
 どうですかね? まだ、自分がステージに立ってるイメージがついてないんですよ(笑)。そこも、これから考えていきたいです。
 
──今後、こういう作品に関わってみたいというものはありますか?
 
 アニメはすごく好きなので、どういう作品と言わずオープニングとかエンディングとか担当させていただけるとうれしいです。あと、アニメの劇伴とかもやってみたいんですよ。
 
──劇伴ですか。
 
 インストを作るのが好きなので、自分の歌もいいんですけど、アニメ作品をBGMから考えてみたいというのがあって。それに、これまでやってきたような「推し活」的な楽曲制作もやっていきたいです。まだまだ推したいキャラクターはすごくたくさんいるので。もっと世に出したいっていう気持ちで、頭がグルグルしてます。

──先ほど『キングダム』への思いをお聞きしましたが、他に今、お好きな漫画やアニメというと?
 
 え、いっぱいありますけどいいんですか?(笑) 漫画では「青野くんに触りたいから死にたい」という作品です。幽霊と人間の恋愛の話で、ちょうどドラマにもなってるんですけど。これがメチャクチャよくて、読んでて「あー、出会ってしまった!」と思いました(笑)。アニメは、この夏から放送される「メイドインアビス」の2期をすごく楽しみにしてます。最初、友達に騙されたんですよ。「すごくキレイな景色の中で、かわいいキャラクターたちがアビスっていう大きな穴を探検する話だよ」って紹介されて、「面白そう~」と思って読み始めて。
 
──間違ってはいないですね、タチの悪いことに(笑)。
 
 はい、読み進めていって悲惨な目に遭いました(笑)。でもその世界観にハマったので、この夏が楽しみです。

──最後に、究極の夢ってありますか?
 
 何ですかね? そういう意味で言うと、『キングダム』に関われて、究極の夢が一つ叶ってしまったところなんですよ。だからこれから夢をどんどん見つけていきたいですね。
 
──見つかったらまた教えてください。ありがとうございました!


1st Single「眩耀」
2022.06.01 ON SALE

 
 
 

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高崎計三

ライター

高崎計三

1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。